シンビズム6 信州ミュージアム・ネットワークが選んだ作家たち
朝日村在住の写真家宇賀神拓也さんの作品の展示があるということで、現地に出かけてきました。先日、研修会があった際、講師としてご講演いただき、宇賀神さんが手がけた「矢じり」を撮影した作品を展示するとのご案内があり、空家活用の視察も兼ねての鑑賞です。当時民宿だった建物(ほぼ民家に近い感じ)を改装してイベントや地元の方たちの交流の場として利用している「木祖村旧藤屋旅館」上がり框から建物の中に入ると、右手には波多腰彩花さんの作品が一部屋に展示され、左は今回の展示作家さんのプロフィール二階へ進み、階段あがって正面にある部屋には宇賀神さんの作品が展示されていて部屋の入り口で「なにこれ!」「どうなってるの!」と連れもいないのに声をあげてしまいました。写真撮影OK,本人からも了解を得ましたのでチラ見せです。単なる矢じりなのですが、ひかりの当て方、順光、逆光の違いでこんなに味わいの違うものができるとは…そして、何より感動したのは、この部屋と作品のバランス。黒と白だけで表現した作品が、この部屋に本当にバランスよく配置され、ここでしか見られない、伝わらない宇賀神さんの表現を体験し、心を動かされました。ひかりに透かした矢じりの写真が素敵で、なにより、それを持っている丸っこい手に惹かれ、急ぎ朝日村に戻り宇賀神さんの手を確認したくてスタジオを訪れたのですが、残念ながら不在。確認は後日になりましたが、あの丸っこい、ごつごつした手でこの写真たちを創ったのだという感慨に浸りそうだ、矢じりは土の中に埋まっていたのだから、この作品の上に立ったらどんな感じなんだろう。と上に乗ってみようという衝動がこみ上げてきたのですが、直前で理性が働いて、素材を確認し、乗ってはいけないものだと理解。未然に事故を防ぐことができました。お時間のある方は、ぜひ、この部屋に入って宇賀神さんの作品をぐるっとご覧いただけばこの素晴らしさがわかると思います。そして、小川格さんの油彩。こちらも部屋に入って小さく声をあげてしまいました。青が!床前に置いた鏡台にこの作品の一部が写り込むのですが、この不思議さもまた良くてやっぱりこの作品もきっとこの部屋でしか味わえない感覚があると思いました。物干し場があるのですが、こちらには小川さんのペットボトルの蓋アートが飾ってあってお天気も良くて、ちょっと風もそよそよしていて、青空との対比がとても心地よく感じました。波多腰さんの陶の作品はほとんどが蚊帳で覆ってあるのですが、真っ白な陶器を、蚊帳を通してみると、フィルターのような感じに不思議な感覚があって面白いなと思いました。右端に少しだけ作品が入るように撮りました。小さな部屋にそれぞれ一人一人の作家さんの作品の展示が配置されていて、計算されて設置したのか、どんな思いでこれをやったのか、作品の見せ方の工夫のしどころなんかも聞けたら面白かったんだろうな。ひとりで「これどうなってんの」「へえー」「こんなんなってんだ」「おもろ」とか言いながらぐるっと屋内を鑑賞。宇賀神さんのご講演の際、縄文人の作品について言及があり言葉がなかった当時、土器のぐるぐる模様に何を託したんだろう…というようなお話がありました。矢じりを見た現代人が感じるのは、現代語じゃなくて当時の感覚で表現しなくてはいけないのかも。と思ったとき、私はもしかしたら、今日の感動を表現するために半日中ぐるぐる渦巻き模様を描き続けていたのかもしれないと思いました。いい時間でした。宇賀神さん、今度会ったときに手を見せてください。