準備体操をするたくさんの子供たちの間を彼はさまざまな声をかけながらまわっていた。
「ほらー!もっと脚曲げてー。」
「無理ー。」
「無理じゃねえよ笑。」
「無理ー笑。」
いちっ、に、さん、しっ。
かけ声がひびく少しだけ緊張した体育館の中の子供たちの顔は彼が通り過ぎたあとはなぜかみんな笑顔にかわっていた。
若いから親しみやすいのかもしれない。
あ、誰かに似ているな。
誰だろう。
そんなに生徒に好かれたいのかな。
学区外から通っている娘はもう友達ができたようだったが、私はまだだった。
もとからママ友がいない私には、ここでママ友をつくるなんて到底無理だろう。
楽しそうにおしゃべりしているママたちから少し離れたところに座った私には、時々こちらを見てピースサインをする娘に小さく手を振ることと、彼のことを考えるくらいしかやることがなかった。
土曜日の午後に行われているその教室は彼くらいの子が5人、少し年配の先生が3人で構成されていた。
かといって毎回8人の先生がいるわけではなく、交代で出たり出なかったりしているようだった。
そう。
私にとっては子、だ。
彼は子供だ。若すぎる。
いつのまにか私は彼のことを考えたあとに必ずそんなことを心の中でつぶやいた。
そして、そんなことは無意味でなによりものすごくキケンだということはもちろんよくわかっていた。
その証拠にそうつぶやいたすぐそばから、私の目はどうしようもなく彼を追っていた。
