私は、カズを見上げていた。
その顔がゆっくり、近づいて。
何度も何度も。私にキスをした。
今までだって。何度も何度もキスはしたけれど。
上から、おしつけられるようにされるキス。
そんなのは、初めてだった。
キスをしながら、カズの手が。服の上から、胸を触った。
その手が、私の着ている服をまくりあげながら、入り口をさがして、すそのほうにおりていった。
和「腰、あげて。手、はいんない。」
なんでワンピースなんて、着てきちゃったんだろう。
初体験にワンピースはふさわしくないって。
今になって、気がついた。
和「こっち。いこっか?」
すぐとなりのベッドを横目に、カズがキスの合間に聞いた。
ちいさくうなずくと、少し痛くなってきた唇を、彼はやっと開放してくれた。
和「服さ、脱いじゃえば。ぐしゃぐしゃになっちゃうよ。」
「えっ。」
和「どうせさ。俺。脱がせちゃうよ。」
「。。。」
和「脱がせてあげよっか。」
「。。。いい。」
和「んふふっ。ほら。ばんざいしてみ。」
「自分で脱げるから。カズ。むこう、むいてて。」
「ん。」
カズは素直にむこうをむいてくれた。
「いいって言うまで、こっち見ないで。」
ワンピースを脱いで。軽くたたむと。いそいで、ベッドの中にもぐりこんだ。
「。。。いいよ。」
カーテンが引きっぱなしの窓のほうをむいて、布団に顔までうずめると。少しカズのにおいがした。
和「こっち、向いて。」
耳もとでかすれる、その声のほうを、おそるおそるふりむくと、すぐ目の前にカズの顔があった。
茶色く透けてる瞳のなかの私は、私をじっと見つめていて。
この部屋のカーテンがせめて、遮光だったらよかったのにって、うらめしく思った。
和「ねえ。今さ。下着つけてる?」
「。。。うん。」
和「そっか。」
そう言って、カズはいたずらっぽく笑った。
「どうして。」
和「だってさ。楽しみ減っちゃうじゃん。んふふ。」
。。。もぉ。
なんだか。
いつもみたいに声にならなくって。心の中でつぶやいた。
本当に。。みんな、こんなことしているの?
カズにされてる間、どこを見てたらいいのかも。
どんな顔してたらいいのかも。
なにもかも。
なんにも。
全然。わかんなくって。
ただ。ギュッと目をつぶってた。
和「手、ここね。」
何度も。何度も。カズの邪魔をしちゃう私の両腕を、カズは自分の首に巻きつけさせた。
「。。。カズ。」
和「ん。」
「あんまり、見ないで。」
和「んふふ。見なきゃできないよ。」
「死にそうなくらい。。。恥ずかしい。」
和「まださ。死んじゃダメね。」
顔をあげないで、カズは続けた。
和「ここで、いいのかな。」
「聞かれても。。。わかんない。」
和「んふふ。そうだよね。」
「。。。うん。」
和「足、もっと開いて。」
「。。。うん。」
和「痛かったらさ、言ってね。」
「。。。うん。」
和「力、ぬいてて。」
「。。。んっ。」
カズの肩につかまる手に力が入っちゃって、どうしてもうまく、力がぬけない。
和「あのさ。ふぅーって、してみ。」
ふぅーっ。
言われたとおり、やってみた。
和「うん、そう。」
ふぅーっ。
和「力、もっとぬいて。」
「んーーーっ。」
和「痛い?」
「。。。うん。」
和「だよね。」
ふぅーっ。
和「。。。はいった。」
ものすごく痛くて。
カズが動くたび、ものすごーく痛くって。
カズをはらいのけたい衝動をずっと我慢して。
カズの背中から、手を離さないように集中した。
つかまって、けっして、はなれないように。
それだけに意識を集中した。
和「なんかさ。すげえ、あったけえ。」
カズが、急にそんなこと言うから、また力が入っちゃった。
和「ちょ。そんなにさ。ギュッってしないで。」
「んーーーっ。」
カズの動きが激しくなって。
私は必死に、その痛みに絶え続けた。
しがみついていた背中から、聞いたことないような、ちいさな吐息が聞こえた。
目をそうっと、あけてみた。
私のすぐ上で。
カズは見たことないような顔をしていた。
私の奥の。奥の。奥のほうで。
なにかが、きゅぅぅぅぅぅぅぅって、音をたてた。
なんか、そんな音が聞こえた気がした。
やっと。
カズの背中から、手を離すことができた。
和「んふふ。しちゃったね。」
「もお。」
今度は、いつもどおり、声になった。
さっき、見ちゃったカズの顔。
恥ずかしくって、ベッドの中にもぐった。
和「ねえ。ここ、おいで。」
「。。や。」
和「はやくこないとさ。
ふとんめくっちゃうけど、いい?」
あわてて顔をだすと、カズの腕がそこにあった。
和「こうゆうのさ。したいんでしょ?」
片方の眉を少しだけあげて。
少し得意気に私のことを見て、笑った。
ロマンチックなムードとか。
甘い言葉とか。
そんなのは全然なかったんだけど。
はじめてが、カズでよかった。
なんか、そう思った。
この先、私が大人になったら。
きっと、今よりずっと、たくさんのいろいろな経験をするんだろう。
そのとき、もしも。
もしも、私が。
カズじゃない、別の誰かと恋におちることがあったとしても。
私のはじめてが、カズってことに変わりはない。
カズはきっと。ずっと。
私の中で、特別な存在になる。
そうゆう人が、なんかカズでよかったなあ。って、なんだか不思議な安心感につつまれた。
そして。
今、目の前にいるこの人も。
唇をとがらせて、少しむずかしい顔をして。
けっして長いとはいえないひとさし指で、私の右の上まつげをいじってる、この人も。
私とおんなじように。
私のことを。
思ってくれてたら、いいのに。
それは。それは。
幸せなのになあ、って。
そんなことを、カズの腕の上にあたまをのせて、考えてたら。
まつげをいじくる手をとめて、彼は言った。
和「ねえ。」
「ん?」
和「さっきからさ。なに思い出し笑いしてんの?」
「えっ。」
和「お前って、意外とすけべだね。」
んふふふって。
楽しそうに、笑った。
