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 会社に慣れたころ、歓迎会が開かれた。俺は課長と桃花ちゃんの間に座らされていた。美月と同じアシスタントの桃花ちゃんは、可愛いし、高橋さんも含め男性陣から受けがいい。でも可愛いだけで、あまり面白味はない。お酒も弱そうだ。

 

 俺は課長たちと話をしながらも、ちょっと退屈で回りを見まわした。すると、一番端の席に美月が座っていた。さりげなく料理を取り分けたり、空いたグラスを片付けたりしている。それが自然な動作で、周りが気にすることもない。

 そんな美月が気になって、俺は何度も見てしまう。すると美月のグラスが次々と変わっていくことに、気づいた。

 

「橋本さん、相変わらず飲むね」

 

「え~、ふつうですよ」

 

「いやいや、強いよ。そこは認めないと」

 会話が聞こえる。

(美月、楽しそうだな。俺もあっちに座りたかったな)

 などと思ってしまう。


 気づくと美月がいなくなっていた。慌てて店内を探すと、カウンターに座っている。俺はトイレに立つ振りをして、席をたった。

カウンターに座る美月の後ろからそっと忍び寄り、耳元でささやいてやる。

 

「なにひとりで飲んでの?」

 

 想像した通り、美月は小さな悲鳴をあげた。俺は一気に楽しくなってしまう。

 

「お料理も全部でたし、やることないからちょっと休憩。飲みたいお酒があったから、内緒で出してもらって、ここで飲んでるの」
 美月はほんのり色づいた顔を俺に向ける。

 

「新潟に行ったときにね、飲んだお酒なんだけど、美味しかったんだよね。なかなか東京では飲めないから、メニューでみたとき、どうしても飲みたくなって。久保田って日本酒、グンソクも飲んでみる?」


 そう言って、自分が持っているグラスを俺に差し出した。

 俺はそれを受け取り、一口飲む。確かに美味い。


 「うまいけど、これかなり強いよ。美月、だいじょうぶなの?」

 

「これぐらい大丈夫だよ」

 

「でも、まえに飲んだ時はそんなに飲まなかったでしょ」

 

「あ~あれは……男の人と二人きりで飲むのに、酔ったらまずいから酔わないように注意してたの。それに、お酒に強い女って、嫌がられるし」

 

「え? いっしょに飲めるほうが楽しいじゃん。こんどまた飲もう」

 

「いいよ。でも男友達とじゃ、そんな飲まないよ。酔ったらまずいから」

 

「だれとだったら、いいんだよ」

 

「彼氏かな」

 にっこり笑いながら言われた。本人は酔ってないというが十分酔っぱらってる美月はやけに可愛かった。
 今でも隙だらけなのに、もっと飲んだときはどんなんだ、と思わず想像してしまった。