私がいつものお店で飲んでいると、グンソクが後からやってきて一緒に飲むことが多くなった。
「グンソク、最近よく来るよね? 自炊するんじゃなかったの」
「料理はいやじゃない」
「じゃ、何で? わかった。一人でご飯食べたくないんでしょ。ホームシック?」
「韓国では、一人でごはん食べてると変なやつと思われるけど、俺はへいき。お母さんもお父さんも働いていたし、俺はひとりでいることもおおかったからね」
「グンソク、兄弟いないの? 一人っ子?」
「うん」
「じゃ、何でここにごはん食べにくるの」
「食事はひとりでもへいきだけど、ひとりで飲むのはつまらない。美月と飲んでると、すごく楽しいし」
イケメンな上に、こんなセリフをさらっと口にする男。それがどんなに罪作りなことか、きっと本人はわかってないんだろうな……
いや、頭のいい人だから、わざとやってる時もあるよね。からかわれたこと何回もあるし。
想像だけど、女の子を口説く時もきっと……
でも、いまの言葉は素直に私の心に響いた。
毎晩のように飲んでいたから、グンソクのことをいろいろ知った。
紫陽花の花が好きなこと
――聞いたとき意外な気がしたけど、青紫の華やかな花は彼によく似合いそう。
スノボーやスキー、テニスぐらいしか運動はしないこと
――基本運動は嫌いらしい。(笑)
ジェットコースターが苦手
――「乗れるけど、わざわざ乗りたいとは思わない」と言ってたけど、それは格好つけ? 本当は苦手でしょう!? と突っ込みたかったけど、実は私も超苦手。
日本に来る前は、毎週のようにキャンプに行っていたこと
――「美月、こんどふたりでキャンプに行こう。星空の下で飲む酒が一番おいしい」
この言葉と一緒に、食堂で桃花たちとキャンプの話で盛り上がっていた時の会話が蘇る。
「BBQか~、みんなでしたいね」
どうして私には、「ふたりで」って言うの。
どうして私は、その言葉をこんなに嬉しく思うんだろう。
グンソクは同僚で、楽しく飲める飲み友達で、いずれ韓国に帰る人なのに。