3


  俺と美月は、毎晩海辺で過ごした。俺だけが知る美月。俺のキスや愛撫に恥ずかしげに応える、可愛い女。俺たちは、何度も何度も、唇を重ね抱き合った。夏が過ぎようとしていたが、2人とも気付かないふりをしていた。
  
  ある日、美月の女友達が訪ねて来て、
「……が帰ってきたよ。会いたがってるけと……」と、俺をチラチラ見ながら美月に話している。
「ちょっと、出かけてくるね」
そう言って、美月は夕方まで帰って来なかった。
  そろそろ夕食の準備にかかる頃、美月は男に送られて帰ってきた。どうも幼馴染みらしい。宿の前で別れた後、男をそっと見送る美月の顔は、夜、浜辺で俺だけにみせる表情を覗かせていた。

  その晩も、俺たちは浜辺にいた。
「あの男が好きなんだろ」
「付き合ってたのか? 今も?」
「今日、2人でなにをしてたんだよ?」
俺の口からは、美月を責める言葉しか出てこない。

「違う……好きだったけど……今は……」
「話していただけよ。それ以上は何も」

「それ以上って、何だよ?」

「何って、私にはわからないわ。あなたが勝手に想像してるんじゃない」
「あなたが好きなの」

  俺をまっすぐに見つめる瞳を信じたい。

  でも……
「あんな目であの男を見てたのに、信じろって? 無理だろ」
「今も好きなんだろ、言えよ」

「ちがう。ちがうの……私は、あなたが……」

「お前を置いて島を出た男なんか、さっさと忘れろよ」

「……‼︎」
「あなたは違うの? あなたは、この島に残るの? 大学はどうするの?」
「あなたも一緒じゃない! さっさと帰ればいいのよ」
  夜の浜辺の可愛い美月ではない、昼の顔の美月。勝気な瞳。でも、震える肩。

  俺は見えていたのに……気付いていたのに……知らないふりをして、
「そうだな。夏休みも終わるし、さっさと帰るよ」
  そう言い放ち、美月を1人浜辺に残した。

  俺は予定を切り上げ、3日後には客船に乗っていた。
  美月に溺れていたからこそ、許すことができなかった。
  それでも、何度も連絡しようと思い……でも、出来ずに時は過ぎ……
  いつしか、日常の中で苦い思い出に変わり……思い出の1つとなり……
  すっかり忘れた頃、夢に入り込み俺の心をかき乱す。

(俺はなんて、子供だったんだろ……)

(今なら、もっと上手くやれたのか……)

なんて、心にもないことを思ってみる。

  今夜、美月もまた、誰かの腕の中で寝ているのだろうか……あの男か、別の奴か……誰でもいい、誰かの温かい胸の中で安らかに寝ているならいいさ……