いにしえの
小倉の山の
青もみぢ
雨に洗われ
新しきかな



きっぱりと
梅雨明けにけり
今朝の空
入道雲の
もくもく湧きて


夏の宵 豊かに白き 夕顔を 一つ二つと 数へし祖母は


焼け跡に 小さく建てし 隠居所に 祖母は草木を 友とし過ごしき 


日ひと日 レース編みゐし 祖母にまね 幼き吾も 針を持ちゐき 


華やかな ものことごとく 毀たれて レース編む祖母 何思ひけむ


華やぎし 日々の名残の 友禅裂 孫のおもちゃの 布団となりぬ


友禅裂 鏡仕立ての 布団にし 寝かせし人形 金髪碧眼



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バーチャルの 仮面を脱ぎて 出逢ひたし 君を求める 心はリアル

メールといふ かぼそき糸の 向かうには 君の確かな 息づかひあり

大いなる 手に守らるる 心地して 少女のごとく 一夜すごしぬ

恋しさは 逢へばつのると 知りながら 次の逢瀬を 指折り数ふ

桜狩り 残る命に 幾たびぞ その1日を 君と遊びぬ

耳もとに 健やかに聴く 汝が寝息 吾の臥床を 豊かになせり




短歌新聞社の年刊短歌集に投稿した、2008年度中に発表した作品の中から、6首を選んで登載していただきました。

大先輩の作品と並べてもらって、ニコニコです。



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