マザーズ/金原 ひとみ
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彼と知り合った頃18だった私は今、四捨五入したら30だ。

チューハイとビールばかり飲んでいた私は、央太と付き合っていく中で、

ジントニックやワインをを飲むようになり、一枚が一万円だったワンピースは一枚二十万でも買うようになった。

央太の手ほどきで苦手だったインターネットを克服し、DVDもCDもケースを捨て、

収納ファイルにまとめるようになった。

今の仕事を始めてすぐに結婚した私は、央太と暮らしてゆく中で、そうして少しずつ価値観を変えていった。

私には、央太の要素が大量に溶け込んでいる。だから私は央太を他人だと思えない。

彼は私の血のようなものであって、彼と別れたとしても、その血は永遠に体内を巡り続けていくだろう。


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時間がなくてなかなか先に読めないけれども、

三人の母親達がすべて自分に当てはまるような気がして、

ぞっとしてしまう。



子育てという孤独との戦いの中で、

私はすっかり、変わってしまったと想う。



ものすごく強くなった部分と、ものすごく弱くなった部分と、

「どこか自分を遠くから見て冷めている自分」を手に入れた。





「彼は私の血のようなものであって、彼と別れたとしても、その血は永遠に体内を巡り続けていくだろう。」





人を好きになって、溶け合ってゆくことは、

こういう事なのだ。

だから「忘れる」なんていう事は

血液を入れ替える事をしない限り出来ないし、

「忘れた」なんて、やっぱり幻想でしかない気がする。



でもその血だけで生きて、

とっくに離れてしまった心にしがみついているだけでは

人間何も成長しないし、滑稽だ。


色んな人の血と混じりながら、

けれど決して「彼」の事を忘れること無く、ののしることなく、

人間に深みを出していかなければいけないと想う。





そして私は夕飯の手順を考えながら、

幼稚園で泥まみれで帰ってきた子どもを迎え、

お風呂に入りたくないと、大暴れする怪獣との戦いを終えて、

節々の痛い、疲れた身体で、途方に暮れている。




ずっとずっと、夕方は途方に暮れる、育児。