作曲でも作文でも、何もないところから作り出すという作業は本当に難しいな、と感じます。なぜなら、方程式が存在するわけではないからです。大体の枠組みとしては参考になるものが存在していても(例えば音楽の場合はソナタ形式だったり作文の場合は起承転結だったり)それがそっくりそのままあらゆるプロジェクトに当てはめられる訳ではありません。私も作曲をしているとき、万能の方程式があったらいかに楽かと思うことがたくさんあります。何がよくて悪いのかがわからないので、とりあえず方程式に当てはめる方法でたくさん数を踏みたい、と思っていても、それはかなわない。毎回毎回、何もないところから作り始めるような感覚に陥ります。

やってみては消しての繰り返しで、なかなか前にすすみません。何せ何が良くて悪いのか分からないので、初めは自分の中で「何となくいい気がする」と「何となく悪い気がする」を頼りにするしかありません。作曲のスキルがわかってくると、「何となく」ではなく、きちんと理由付きで解説することができるようになってきますが、これはすぐには身に付かず、コツコツと勉強して行く必要があります。


それで今回は何が言いたいのかというと、まずは核なる何かを決めてしまうのが大事、ということです。作曲の場合、ついついあれこれと一曲に詰めてしまいがちです。必要以上に複雑な構造にしてしまったり、ハーモニーの転調であちこち行きすぎたり、モチーフが多すぎたり。ミニマリズムで、でもバロックっぽい転調があってでも形式はロンド形式で、、、とかやってしまうと、どこから始めて良いのかがわからなくなってしまう。もっと詳しくいうと、どこをまず固めれば全体がまとまるのかがわからない。


そんな時は、とりあえず何か決めてしまうことです。キーを決めてしまう。形式を決めてしまう。モチーフを決めてしまう。そしてどうしても変えないと次に進まないという以外はなるべく変えずに進めて行く。


その日に手に入る食材によって料理を決めていく、というのと似ているかも知れません。もしくは、何を作るか決めていない状態で、ほとんどの食材が手に入るような大型スーパーマーケットに行って、オプションがありすぎて困るような場合に、とりあえず気になった素材を手に取って、そこから足して行って料理の一品を作る、という感じの方が近いかも知れません。


とりあえず一つ、二つ、と決めてしまわないと、何も始まらないし、作品が完成しません。いいか悪いかはやってみないとわからないのです。そこが一番辛いところでもありますが。一生懸命考えて、手探りで何週間も何ヶ月も考えて悩んで作り上げた曲が全くいい曲にならない可能性だった大いにあります。けれど、それがまさにまなびのプロセスでもあります。失敗することで成長する。たとえ何ヶ月も努力して苦労して出来上がったものがおじゃんになっても、その過程で体験したことが財産なのです。


と、自分で書きながらも毎日毎日、作曲をし始めるとすぐに行き詰まり、すぐに色々とそれまで決めてきたことを変えたくなってしまいます。もちろん変えることもあります。けれど、まずはなるべく変えずに最後までやってみることも大切だな、と考えます。特に私のような、セルフクリティカルで、常に自分をジャッジしている性格の人は、まずはジャッジせずに最後までやり届ける練習が大きな糧になると思います。