妻と息子と
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突然の知らせだった

突然の知らせだった。

「右卵巣に腫瘍と疑われるモノがあり、すぐに大きな病院で精密検査をするように・・・と言われた」と女房は言った。

顔はこわばっていた。手には、隣市にある市立病院への紹介状を持っていた。


市の癌検診時・・・(判読不能)・・・あり、昨年もあったのてですが増大しています。

高次(?)機関での精査を指示しました。御高配よろしくお願い致します。


僕は、女房が手にする紹介状の入った封を開け、読んだ。

「昨年もあっただと? それでこの病院はほっといたのかい!!」 と、声を荒げた。

「腫れと言っても、個人差の範囲なんだって・・・」と女房-。

「腫瘍に個人差もくそもあるか!」

女房は黙ってしまった。僕は、ひとりカッカしている自分に気付き、訊ねた。

「で、いつI病院に行く?」

「明日さっそく・・・」


仕事場に入った僕は、しばらく呆然としていた。

順番が違う・・・。腫瘍の疑いがあるなんて台詞は、女房より僕の方が先に受けるものだと思っていた。編集作業で使うワークステーションではなく、メールのやり取りに使うPCの電源を入れ、急ぎ、卵巣腫瘍とキーを叩き、検索した。

「沈黙の臓器・・・」

「何らかの症状が出ているときには、既に病気は進んでいます・・・。不正出血、腹水による膨満感等・・・」

僕は、明らかに動転していた。仕事場は自宅と同じ敷地内にある。ぼくは母屋に取って返した。

「自覚症状はないの?痛いとか、腹が張るとか・・・」

「全然なし・・・、メシもうまいし・・・」と女房はすこぶる元気だった。

「なに、あわててるの?」

「そりゃ、あわてる。あわてるよ、普通・・・」

女房は、三歳の息子とうまそうにおやつを食べていた。


この日、僕は一冊の大学ノートの最後のページに、こう書いた。

「不安から自由になる手立てはただ一つ、徹底的に認識する(知る)ことデアル-」

腫瘍・・・この日はまだ癌という字を書く気にはなれなかった・・・について、女房の様子、医者とのやりとりなどについて、知りうることのすべてをノートに書き残しておこうと決めた。医者にかかるのも、病気を治すのも、主体的に考え選択していかなくてはならない時代なのだ。


長い未知なる道を女房と三歳の息子と僕は歩き始めた