顔を上げたそこにいたのは…、
「――――あなた方…、」
其処にいたのは一人ではなかった、
いつの間にこんなに前からきていたのだろうか、
仲のよかった友人たちが其処にいた。
悲しそうな顔をするものもいれば、どのような顔をすればいいかをよくわかってないものもいる。
その集団の先頭、己に声をかけたのは他でもない、ユーだった。
「…ユー…!?」
驚くのも無理はないだろうか、彼は暫く家を空ける予定だった、
だというのに其処にいたのは、前とかわらずにやさしい笑みを浮かべる相手。
「いつ…帰ったのですか。」
「いつだっていいでしょう…、そんなことより、緑さんっ、」
すっ、と己の肩を彼に捕まれる。
細い肩に少しばかり力強く食い込む、指先に、少しの痛覚が肩を走る。
「本当に…、行かれるのですか…、」
「―――…、」
その真摯な瞳に言葉は空を彷徨う。
まっすぐと己に向けられた言葉に、どれだけ息が詰まっただろうか、
ドクン、ドクン、と心臓の音がいつもより大きく聞こえる、
緊張のせいだろうか、まるで喉から心臓が出てそうなほど。
一度、一度だけ、息を吸って、はいて、
そして、
「…はい。」
ゆっくりと、短く、その言葉だけをつむぎだす、
己の言葉は、己の瞳は、彼にどのように受け取られただろうか、
その言葉を聴いた彼は、スッ、と手を離す、その瞳はなんとも、なんとも複雑な色を浮かべていた…。
「そう…、ですか。」
そういって後ずさる彼の後ろから飛び出す陰、
己が反応するよりも早く、その影は己に抱きついてきた、
「緑さぁん!」
水琴であった、
「本当に…、ホントにいっちゃぅんですか…?」
「水琴くん…、ええ、いってしまいますよ。」
「さびしいですよぉ…!」
ぐりぐり、と己の胸に顔をこすり付けてくる彼女の頭を今はゆっくりと撫でて、
「さびしくなど…、ありませんでしょう、あなたの周りには楽しい方たちが沢山おられる。」
そうつむぐと、ゆっくりと、緑は水琴の身体を離す、
ゆっくりと、ゆっくりと、まるで惜しむかのように、
そうして、緑はゆっくりとその場の者へと笑いかけて、
「決して……、決して悲しまないでください、別れは喪失ではなく再会への道しるべ…、そして、
どうか、どうか悲しまないで、それはただ、あっしが其処にいないだけでございましょう。」
そう笑うと、歩みだす、
行き様に、夫へと、薄く唇を重ねて、
「ユー…、あっしに縛られないで、好きな人生を歩んでください、
浮気なんかされたら悲しいですが…、ふふ、あっしがいった後なら許してあげます。
今でも、ずっと、これからも、ずっと、愛しております、でも…、あなたの心を縛る気は毛頭ないから…、
だから…、あなたの望む、もう一つの恋をなさってください。」
そう言うと緑は、夫の横を通り過ぎる、
その場にいる友人たちにはただ笑みをむけて、
嗚呼、響き渡るその足音が、その者たちにとってどれだけ哀しく、さびしく、響き渡ったであろうか。
「……さよなら…、さよなら、です。」
巡り来る時間に、響きわたるのは足音、
そうして其処に生まれたのは未完成な空間―――。
不自然なほど澄み渡る青き空の下で…、悲しみと楽しさの幕は静かに閉じる。
§追記§
本日を持ちまして、緑の帽子並び、サブキャラクターはキャラクターデリートを実行しました。
当人がメモを送っておこう、と思った友人各位様には、メモを少なく、一言程度おくらせて頂きました。
加え、今まで、緑の帽子、そしてサブキャラクターにかかわってくださった皆様、
本当にありがとうございました、そしてお世話になりました。
多大な迷惑をかけることも御座いました。
すべての意味を含め、今一度、
ありがとうございました、あなた方のおかげで、今日までのあっしは成り立っていました。
きっと、きっとまた会えることを願います。
§データ§
・緑の帽子 狐 138
・Spuky 獅子 35
・録の帽子 羊 175
thnak you so........