「その細胞のひとかけらでも、手に入ればな」

 そう君が言ってから、8年と半年経ったようだ。
 いつの間にか俺は酷く阿呆になってさ、
 誰の声も届かないような そんな人形になっちまってさ、
 でも熱くなるよ。この言葉を思い出すと。
 不思議だよな?どうしてだか分からないんだ俺にも。
 ただ言えるのは言葉の意味なんかどうでもいいってことで、
 俺に熱を与える君の言葉の力って言うのは そう

 音。かな?

 ・・・・・・。

 馬鹿やろうって、声が聞こえるようだ。
 
 響きだよ、つまりは。
 言葉の音と、君のかすれた声の音が心地よくて
 不思議と俺は心を任せてしまうんだ。

 意味なんかない。
 意味なんかあっちゃいけない。
 君は俺に背を向けているから期待なんかしてないけれど

 この音だけは俺のもの。

 だからさ俺は今でも待ってるのかな、あの日のような寒い日に雨上がりの湿気た空気を貫いて
 強く 強く 真っ直ぐ向かってくる君の音をさ。

 また熱くさせてくれよ 何度でも
 柔らかい音。 
 俺の音。

 君の声をさ。