「触れないようにしていた」
「どうして」
「どうして、って・・・・・・さぁなァ」
そこで初めて考える。
どうしておれはあいつと距離を置こうとしていたのか?
人に言えるようなたいした理由は思いつかなかったが、それなりに真面目に考えた末に口から出たのは
「溶けそうな気がした」
だった。馬鹿らしい。
分かりきっていた反応だが、ショウは吹き出した。
「おまえがそんな台詞を吐くとはな!」
うるせェ。
・・・でもな、本当にそうなんだよ。
「分からないだろうな、おまえには」
「分からんね」
「分かってほしくもねえが」
意識がどこまでも溶けて、混ざって、ぐちゃぐちゃになって、あいつが違うものになるとき。
そのきっかけは、きっとおれなのだろうと、感じていた。
「ずっとおれたちは、違う世界にいて、繋がらない方向を向いていたんだよ。
それを理解して、その上で一緒にいた。
お互いの芯には触れなかった。深くは知ろうとしなかったんだ」
溶けかけの氷のように、おれたちは脆くて
溶けかけの氷のように、おれたちの世界の境界線は崩れやすかった
でもまだなんとか生きてるだろ?
おれとおまえも、おれとおまえの境界線も。