花火2


「もしかしたら、少しだけ、良くなるような気がするんだ」

大介は、見上げて、ああ、なんて綺麗な緑なんだ、と呟いた。
緑色を捨て黒色に染まった男はもうこの世にはいないけれど。

「パンドラ。もう少しだけ、おれたちは傾けないだろうか?
壊すことよりも、この光を守れるように。
ミッドナイトが示そうとした道は、決して暗闇ではなかったはずだ。

なぜ、あいつが、虎侍に殺されることを望んだのか。
・・・・・・それは、守る為なんだろう、あいつを」

「分かってるわ」

分かっている、けど。
血まみれの身体が、冷たくなっていく存在が、初めて見せた一筋の涙が。
『名前、呼んでくれ・・・』
声 が 。


「花火を・・・見ようって、言ったの」


あの人が、そう言っていたのよ。


溢れそうになる感情を押さえつけて、言葉をひとつひとつ探す。
大介の手が伸びて、そっとパンドラを抱きしめて——「見ないから」と囁く。
溢れ出た涙が止まらずに、


・・・・・・・・・・


「決して人を見てはいけない。なにかを奪われた時に見るものは殺した相手の顔じゃない。
おれたちが見るものは、おれたちの心の内なんだ」


そう、憧れた人が言っていた。
あの人の傍で、虎侍もこの花火を見上げて、なにかを想っているのだろう。


「約束は、おれが必ず。」


なあ、ミッドナイト












・・・・・惚れた女を泣かすなよ。