ジャズピアニストのビル・エバンスはピアノを特注製作依頼しました。

このピアノ製作者がGeorg Bolin(ゲオルグ・ボーリン 1912 - 1993 )です。

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ここで楽器塗装の話しになる。

高嶋さち子が2億円で購入した「ルーシー」(イタリアのバイオリンメーカー)に施されている塗装を調べてみた。

1700年代にウィルスやバクテリアを防ぐプロポリスがバイオリン塗装にも使用されていたとされるが、ストラディバリウスは松ヤニと亜麻仁油を使用していたという分析がなされた。また、優秀な古今バイオリン9台を二重の目隠しをしてテストする世界的コンテストではストラディバリウスは最下位であり最悪な音である実験もなされている。

これらのテストは、音色、音の伝達性、演奏しやすさ、演奏への反応性、などが競われた。現代製作バイオリンが上位となった。

プロポリスとはミツバチの巣由来であり大切な赤ちゃんを守る為の抗ウイルス作用がある。これはウルシの木が自分を守る為の強力な殺菌効果があるのと似ている。ウルシの木は人間に寄り添って里山に生息し、10年間にたった一度だけ200ml樹液を採取し終えるとその年に伐採されてしまう。二度と樹液が出ないからだ。最近ではウルシはコロナ菌を秒殺してしまうデータが出た。

クラシカルギターの塗装は主にシュラック(shellac)が使用されているらしい。

shellacは貝殻虫(Coccoidea)から抽出され、現代では食品衛生法に属し、医薬品の錠剤や果物などのワックス等に使用される。私がこの動物性膠を施した楽器でテストしたところ、水分に弱く、かつアルコール類などにもすこぶる弱く、あっというまに溶けてしまう。見た目は硬いが、薬品や水分に非常に弱い塗料が高級クラシカルギターの音の秘密だ。

膠類はメンテナンス性能に優れている。楽器が故障した場合に、熱湯や湯気によってあっという間に剥離可能であり、バイオリンやギターをバラバラに分解できる。故に高温多湿な状況下で保管してはならない。鉄則だ。しかしここは日本。。

漆の欠点であり長所を再確認する、漆が硬化したものを現代の薬品で溶かす事は不可能だ。正式実験によると硫酸に24時間漬けても、ガソリンに一週間漬けても、何ら変化しない。強靭な強さである漆に惚れ直す一番の理由だ。自分でも何度も実験を繰り返している。さらに強力な接着力と水に浮かべて沈んでしまうような樹木並みに硬く、漆は音の伝導がすこぶる良い。自己製作ギター及び打楽器等は全て漆で組み上げてきた。

音テストで最下位のストラディバリウスは現代弦の張力や演奏性能を向上させる為、実演に耐えうるように仕様改造されたものが殆どだ。それでもネームがついたバイオリンは高額で取り引きされている。

「欲と習慣性」は私のブログで散々述べて来たが、あらゆる事由や行動に適応され、この楽器たちにも当てはまる。人間は実際のデータを知る以前に、知らないうちに洗脳され、欲と習慣性に植えつけられてしまう。この法則から推測すると、高級バイオリンは、数億円で高額だから、この世に数台しか無いから、300年を経た古い時代を経験したから、ハイテクニックな著名ミュージシャンが使用しレコーディングしたから、などなど。これらの事由はコンサートに来た聴衆も演奏者のテンションをも上げ、両者アドレナリン大放出によって、古代の音が「良く」聞こえるのだ。

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実際に読売交響楽団のバイオリニストにインタビューしたことがある。

・今までで素晴らしい演奏者は居ましたか?

「ある。たった一回だけNYで。彼と一緒になった瞬間は鳥肌が立った」

・今までで一番ダサいと思った音は?

「この山手線のホームの音楽だよ」

・誇りに思うことは?

「この指先だけで家族を養ってきたことだ」

彼とは2年間で12回ほど話しをした。

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話しがまたズレたが。

アドレナリンが上がった演奏者と観衆は、より最高の音を得る。この場合、単なる音色の違いで無く、音楽として放たれた芸術なのだ。ロックコンサートでも野外フェスでも同じことは言える。

未だに越えることが出来ない歴史とは、そういうことだ。しかし、人間はさらに同じことを繰り返す。欲と習慣性にハマる。

スポーツでも同じで東京オリンピックをTVで見たことがある人ならわかるだろう。その栄誉を勝ち取るまでの軌跡とエピソードが必ず語り継がれる。

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話しがズレっぱなしだが(lol)

シュラックとウルシのハイブリッド。
ビル・エバンスと彼のピアノ。



これらは、私の実験と経過年数を経た銘器アナライズによって、私の大改造ハイブリッド計画が進んでいる案件であり、実行中である。

すでにかなりの失敗をしているのも事実だ。失敗談を語ると、また夜が開けてしまうので次回に回す。

アディオス!

楽器に求めることとは。

私のモノ造りは1歳半から始まり、半世紀どころか60年を超える。経過年数に及ぶ優越などは無いが、不思議に思う事が未だに山のように襲ってくる。

楽器は伝統的アナライズや知名度なども優先されがちで、さらに厄介な事に「良い音」と称して時代の変化に合致させ、ある時は時代に逆行しながら永久に続く厄介な物体だ。

楽器は文化を生み、人々を魅了し、新しいジャンルを生み出してきた。それとは逆に古来からのサウンドを追求する人々も多く存在する。

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Georg Bolinに出会った。

それまでの私は、演奏する楽器ギターを自ら製作していた。

私が製作するエレキギターは、ギター単体で音が決定し、シールドを繋がなくても、どのような音響アンプ類でも自分の思惑通りのサウンドが出なけれ気がすまない。その結果、ケースから出したエレキギターにはフォーンジャックが無い。つまりシールドを刺す穴は無い。アコースティックギターと同じでしかも大音量を奏でる。

このシステムを完成させるのに30年間かかった。

それだけアコースティックサウンドが大好きなのである。私のエレクトリック・ギターのサウンドベロシティはアコースティックギターに匹敵する。

話しがあらぬ方向へズレるが、Georg Bolin(ゲオルグ・ボーリン)はスウェーデンのギター製作ルシファーで、1993年82才で他界してから現在まで30年間の時を経ている。彼の子息は画家としてストックホルム近代美術館に作品が残っているがギター工房は引継いで無い。息子は父が亡くなって3年後に若くして亡くなっている。(スウェーデン語wikipedia参照)

ゲオルグ・ボーリンは家具職人であったがピアノを作り始め、彼の作ったピアノはABBAのレコーディングやABBA全盛期フォトショットに使用され、その後売りに出されたピアノは1億円を超えた。



ゲオルグ・ボーリン(1912-1993)は、その後ギターを製作し続け、現代の大音量サウンドでなく、楽器本来のサウンドを追加し続けた。ギターの父巨匠セゴビア(アンドレス・セゴビア1893-1987)もボーリンのギターを使用した。

彼の作品は、時代の流行を追い続けるスペイン製のギターほど人気は及ばず、ボーリンギターは一般的使用頻度は限られている。

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1億円のピアノを作ったボーリンのギターは日本が誇るクロサワ楽器店に3本しか無く、東京に1本だけあった。価格帯は100万円程で希少性はあるがサウンドが現代的で無いためか、継承者が居ないためか、世界中を検索しても数が少ない。

「この店にあるギターを全部弾いてみたい」とクロサワ楽器総本店に出向いた。コロナ禍で来客も少ないらしく、私の我がままを全て受け入れてくれた。

ラミレス、ハウザー、フレタなど600万円を超えるギターを弾きまくった。なるほど、そういうことなのか。30年前の私では気づかなかったことが少しわかった。

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Georg Bolin
Stochholm

頼み込んで譲り受けてきたボーリンのギター。自分でメンテナンスに取りかかった。

楽器というのはあまりいじらない方が良い。名画と同じく改造してしまうと価値が下るのは知っているが、製作者の意図を踏まえつつ次の世代に引継いでこそ「良い音」を残すのでは無いかと信じている。

ボーリンのギターは膠塗料(Glue paint)で仕上げ塗膜になっており、これがボーリン特有のサウンドの秘密になっている。このことに気づいた理由は、ここが日本だからだ。日本は湿気が多く年間平均湿度60%を超える、ボーリンの国スウェーデン・ストックホルムでは湿度1%が5ヶ月以上も続き、夏でも最高気温22度、湿度は40%の「快適」な期間がストックホルムである。

1989年から日本に居たコイツの塗膜が乱れに乱れている。その原因は日本の湿度だ。

膠が水分を吸ってしまうからで、膠を積層すると油絵画や日本画のように塗膜が割れてしまう。音を優先する為の膠塗装は音の拡散に適しておらず、さらに耐久性が無い。

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さて、どうするか?

漆である。
漆は高温多湿で硬化するため夏が一番作業に適していると思っていた。ところが低温で固まる方法はある。湿気を含んだ膠の上膜に漆をコーティングすると下層と上層の乾燥時期にタイムラグが起き、塗膜が割れるかシワクシャになるのか。ならば最も乾燥している日本の冬に漆を塗る。逆転の発想である。

漆を選ぶ理由は、4000年の耐久性である。インフルエンザを5秒で殺傷する強烈な殺菌力、硬化後の表面モース硬度は鉄と同じ硬度「4」の強力な耐久性、そして仕上げ面の美しさも兼ね備え、さらにナノ単位(1/1000mm)まで塗膜の厚さを制御可能だ。

漆が音へすこぶる良いことは実験済みだ。ただ手間がかかるので一般的では無い。

100万円のギターが1億円のギターになる日が来るのか?

そんなことはどうでも良い。とにかくベストコンディションを作り、新しい音楽に取り組みたい。

アディオス!
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂を望むアルノ川を挟んでちょうど反対側に位置するフィレンツェ屈指の高級皮革バッグ店からのオファーにより、MIDKNOT発明品を日本から送り3週間で到着。


davvero bellissimi(本当に美しい)の称号を頂きました。

グラッチェ!