そうだ、アンマンへ行こう・・・ | 中東倶楽部 映画・番組のブログ

そうだ、アンマンへ行こう・・・

キャプテン・アブラーイド
(ヨルダン映画/NHKアジアフィルムフェスティバル 09年上映作品

/2010年10月5日 NHK・BSハイビジョンにて放送)


 涙腺が、緩む映像だった。
それは恐らく、ヨルダンで生活したことがあるからであり、外国人として触れる同国の、実直さ、同時に洗練された印象が滲み出ているからなのだあろう。しかし一方で、国際競争力を持つ産業が殆どないのに、やけに豊かな生活をしている人々が多いアンマンの、人工都市的側面も盛り込んである。
 ダウンタウンの付近にある低所得者エリアの高台を舞台にし、貧しさの犠牲になる子供たちを取り上げながら、眼前に迫る高層ビル群が入り込む。そこには、ヨルダンの人口の約7割を占めるとされるパレスチナ人がいて、難民キャンプもある。イラク戦争後には、100万ものイラク人が存在したという。しかし、それらは必ずしも全てが貧しいわけではなく、前政権との関係性から全く働かなくても豪邸で生活でき、アンマンの地価高騰を引き起こしたとも言われるイラク人も多数いた。200万都市アンマンの、印象で言えば半分ほどの面積が高級住宅街である。
 ステレオタイプのようであってステレオタイプではなかったりする。そこまで感じながら鑑賞してしまうからこそ、恐らく目頭が熱くなるのであり、何もしらない観衆にどれだけ伝わるのかは自分でも分からないが。
 映像美が堪能でき、説明を省いたカットは映像美を際立たせているが、余りにも言葉足らずな部分もある。最後の展開も、慌しいし、主要登場人物の一人の子供が、ラストシーンでパイロットになっているのに、アンマン自体には昔と今がない。
 ただ、こんな中東映画は見たことがないほど、叙情的ではある。特に、あの古びた空港に、新ターミナルが開設されようとしている今、何かに追いやられていくような切なさが溢れている。親族にパイロットが多く、アメリカで育った監督の必然が製作された作品は、どこまでいっても、外国人の目線の延長なのかもしれない。それでも、個人的な話で言えば、かつてアンマンで生活していた娘を連れて今年の夏同地を再訪した時に、眼下に砂漠が目に入ってきた瞬間に涙がこぼれて来た。そんな風にさせる何かが、この映画にはある。



 DVDが海外では販売されているようなので、探したい。

 ストーリーは、空港で清掃員として働く老人が、ゴミ箱からパイロットの帽子を拾うところから始まる。飛行機に憧れる自宅近くの子供たちの夢であるために、彼はパイロットを演じ、その嘘がばれる。それでも、「キャプテン・アブラーイド」となった老人は、子供たちの毎日に向き合い続け、やがて。。。

(デカプリオの「ワールド・オブ・ライズ」は、ヨルダンを舞台にしながら、映像からみると、殆どヨルダンでは撮影していないようだ。シーンの違いなどを見比べてみるのも一興。)

(匿名ライターG)