お久しぶりです、『トシ』です。


太郎さんは今日、当直明けでした。


たぶんね、疲れているのだと思います、さっきまで泣いていました。


俺も油断していたのだけれど、先ほどまでテレビで医療関係の、子供の臓器提供の話題が流れていたらしくて、俺が帰ってきたときにちょうど太郎さんがテレビにくぎ付けになっているところでした。


今日この番組があるのは知っていたんです。


いつも太郎さんが見そうな番組はチェックを入れていますからね。


でも、つい忘れてしまった、「太郎さんに「見ちゃ駄目だよ?」って注意しておけばよかった」と思ったのですが、もう遅かった。


最近気持ちが上向きになっていただけに、今日の泣き顔は久しぶりに見る……可愛い顔でした。


本当にごめんね?でも泣かせてよかった。


帰ってきた瞬間は「失敗した」と思いましたが、でも太郎さんの心は、今回それくらいでは崩れなかったから、ね?


涙を出すことによって心を浄化することも大切だよ?


太郎さんが泣きながら見ていたのは、移植のために臓器を摘出したあと、医師が献体に頭を下げている一枚の写真でした。


太郎さんはその一枚からいろいろな感情を噴出したのだと思います。


まず自分は、そのようなカテゴリーから外れたところで仕事をしている、はたしてそれでいいのか……もしかしてもっと自分を有意義に使ってくれるセクションがあるのではないかというジレンマ。


そして小さな子供が持っていた人生観を目の当たりにして、太郎さんが自分の人生観を卑下するような、これはあまり良くない事なのですが、いつもありがちな「僕は駄目だ」という思考回路に至ってしまった、これだけは俺の落ち度だった。


もう少し早く帰ってきて、「一緒にみよう、ね?」 と言っていればよかったのかもしれませんが。


でも過ぎてしまったことは仕方ない、太郎さんの心が少しでもマイナスの方向に傷ついてしまったら、それを修復するのは俺の仕事ですから、ね?


 


さて、これから太郎さんを一晩中抱きしめて、そして涙を流してすっきりしすぎた、ほんの小さな傷を修復しましょう?


俺は太郎さんの傷つきやすい心も、不安定な精神も、そして被虐的な性格も、すべてをまるめて愛しているのですから、ね?


今夜は思い切り泣いて、そしてまた楽しい週末が来るまで頑張りましょう。