監督:オリベル・ラシェ
主演:セルジ・ロペス、ブルーノ・ヌニェス・アルホナ、ステファニア・ガッダ、ジョシュア・リアム・ヘンダーソン、トニン・ジャンビエ、ジャド・オウキッド、リチャード・ベラミー
失踪した娘を捜すため砂漠のレイブパーティに参加した父と息子の旅の行方を、奇想天外なストーリーとクールなダンスミュージックを融合させて描き、本国スペインをはじめヨーロッパ各国で話題を集めたロードムービー。
ルイスは砂漠でのレイブパーティに参加したまま行方がわからなくなった娘を捜すため、息子エステバンとともにモロッコの山岳地帯から砂漠の奥地へと車を走らせる。やがて彼らは現実と幻覚が混濁するような野外レイブ会場にたどり着くが、そこにはすでに娘の姿はなかった。父子はレイブの参加者グループを追い、娘が向かったと思われる次のレイブ会場を目指すが……。
父ルイス役に「パンズ・ラビリンス」のセルジ・ロペス。「ファイアー・ウィル・カム」のオリベル・ラシェが監督・脚本を手がけ、製作にはスペインを代表する名匠ペドロ・アルモドバルが名を連ねた。タイトルの「シラート」はアラビア語で「道」を意味し、宗教的な意味においては審判の日に天国と地獄の上に架けられる細い橋を象徴するとされる。2025年・第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員賞など4冠に輝いた。第98回アカデミー賞では国際長編映画賞と音響賞にノミネート。(映画.com)
2025年製作/115分/PG12/スペイン・フランス合作
原題または英題:Sirāt
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2026年6月5日
行くも地獄、帰るも地獄
映画祭でお披露目されてから、
ずっと注目していて、ようやく鑑賞。
なるほど、
この映画の宣伝で言われていたのは、
こう言う映画体験をすると言う事だったのか。
鑑賞し終わって「シラートってそういうことだったのか!?」
と、砂漠のど真ん中で起こる地獄を主人公たちと共に経験した。
グッときた点
①レイブの不穏さ
冒頭からレイブに踊る人々を映し出す。
重低音を聴かせたレイブシーンは、
これから起こる不穏な出来事を暗示するかのように、
ズシズシ腹にパンチを入れてくる。(劇場鑑賞がオススメ)
キャラクタークレジットもレイブシーンで行われるのだが、
一人一人の表示が気持ち長く感じ、
ただならぬ雰囲気。
この不穏さが良かった。
②タイトルの出し方
南の方で行われる別のレイブ会場に向かうチームに合流することになったルイス達。
始まって30分くらいだろうか、
3台の車が横一列に並んだ時に、
タイトルがドーン。
ちょっと意表をつかれたし、
出し方かっちょいいなと思った。
③連続発生する衝撃展開
ひたすらレイブ会場を目指す一向。
崖の道を走っていたが、
そこで1台の車がスタック。
何とか車を動かせたと思ったその瞬間。
最後方に留めていたルイスの車がサイドブレーキが緩かったのか、
突然動き出した。
息子のエステバンを乗せた車が、
ルイスの声掛けも空しく、崖の下に落ちていった。
あまりに突然のことに、
見ているこちらも啞然。
ルイスは絶望に打ちひしがれる。
それだけでは終わらない。
絶望したルイスと、
ルイスを案ずるレイブ仲間一行は、
あれよあれよと地雷原にたどり着いてしまった。
ハイになって、気持ちよく踊っていたところに、
地雷がドーン!!!
え?
ちょ、待って待って!
助けに行こうとした仲間もドーン!!
まじかよ!?
何だよこれ!?
もはや何が起きているのか理解が及ばないくらい、
唐突に悲劇が起こる。
ルイスの立場だったら到底心が耐えられないが、
映画的な思い切りの良さというか、
衝撃的な裏切りは、
なかなか味わえない代物だった。
惜しい点
①なぜ引き返さなかったのか
ラストの地雷原を抜けるくだりは緊張感が半端じゃないが、
一方で、
何で来た道を引き返さないのか?
それが頭から離れなかった。
彼らは前に進むことだけを考えていたが、
どう考えても「自分たちが来た道を戻る」のが一番なはずだ。
だって、地雷は踏まなかったんだから。
そこの説明がないままに前進して 、
車も、仲間も失っていく彼らの行動が理解できなかった。
②娘はどうなったのよ?
物語のきっかけは、
ルイスの行方不明になった娘を探すのが目的だったはず。
だが、この答え探しは息子の衝撃的な悲劇の後は、
もはやどこかに行ってしまった。
最後は、地雷を踏むか踏まないかの極限状態のゲームに突入して、
いつの間にか娘のことはなかったような扱いに。
そもそもの目的だったはずの娘の捜索については、
なにかしら結果を示してもらいたかったので、
ここはモヤモヤが残った。
まとめ
「ここからの展開はこうなるだろうな」
という、安易な予測をことごとく裏切ってくる本作。
しかも、それが予兆もなしに突然やってくる。
この衝撃は、鑑賞していてもかなりしんどかった。
『シラート』とは、アラビア語で「道」という意味があり、
宗教的な意味においては審判の日に天国と地獄の上に架けられる 「細い橋」を象徴するとされる。
まさに、道が違えば結果は違った。
ミイラ取りがミイラになってしまったってやつだ。
ルイスが危険な選択をしなければ息子まで失うことはなかった。
ラストの地雷原歩きに関しても、
まさに「細い橋」を渡るような状況で、
タイトルにしっかりこの先の地獄が明記されていたのだ。
にしても、最後の地雷原歩きは心臓に悪い。
いつ爆発するかわからない状況で、
心拍数は爆上がりだった。
最後の二人が歩き切る場面は、
本当に心臓に悪く、
「早く終わってくれ~」と心が叫んでいた。
感情もぐちゃぐちゃにされ、
緊迫感も最上級まで押し上げられ、
まさに映画体験にふさわしい作品だった。
最後に電車に揺られるルイス+2名の生還者。
この電車でどこに向かうのか、
ただただ虚しさしか残らないラストだった。
展開の不合理さや、テンポが悪い点はありながらも、
この不条理の世界を好むのであれば見て損はない一品だと思う。
ただ、この手のバッドエンド系が苦手な人には決してお口に合わないので、
手は出さない方が身のためだ。
か~な~り、人を選ぶ作品だった。
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