監督:マルコ・クロイツパイントナー

主演:エリアス・ムバレク、フランコ・ネロ、ハイナー・ラウターバッハ

 

ドイツの現役弁護士作家フェルディナント・フォン・シーラッハの世界的ベストセラー小説を映画化した社会派サスペンス。新米弁護士カスパー・ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人を担当することに。それは、ドイツで30年以上にわたり模範的市民として働いてきた67歳のイタリア人コリーニが、ベルリンのホテルで経済界の大物実業家を殺害した事件で、被害者はライネンの少年時代の恩人だった。調査を続ける中で、ライネンは自身の過去やドイツ史上最大の司法スキャンダル、そして驚くべき真実と向き合うことになる。主人公ライネンを「ピエロがお前を嘲笑う」のエリアス・ムバレク、被告人コリーニを「続・荒野の用心棒」の名優フランコ・ネロが演じる。監督は「クラバート 闇の魔法学校」のマルコ・クロイツパイントナー。(映画.com)

 

2019年製作/123分/G/ドイツ
原題:Der Fall Collini
配給:クロックワークス
劇場公開日:2020年6月12日

 

 

許されざる過去 

 

これは重厚且つ見応えのある作品だった。

何ともなしにネットを漁っていて見つけた作品だったが大当たりだった。

 

最後はコリーニの犯行の理由が明らかになり、

正義とは何か?戦争犯罪は許されるのか?

という実際の法律に疑問を投げかける構成となっている。

 

  グッときた点

 

①法廷サスペンスとして秀逸

 

物語の流れはこうだ。

 

1:事件発生

2:容疑者黙秘

3:弁護士の調査

4:被害者の過去(ナチス将校として虐殺をしていた)が明らかに

5:被害者は法律(ドレーアー法)上、無罪とされている事実が発覚

6:その法律を作成に関わったマッティンガー教授が承認台に

7:教授はドレーアー法が今の法解釈では「許されるものではない」と証言

8:判決直前、収監中のコリーニが自殺。裁判が終了となる

 

4あたりから目が離せなかった。

そして、この映画の一番の見所は6、7。

 

ここでドレーアー法に対しての問題提起が投げかけられる。

※ドレーアー法=ナチス時代の戦争犯罪に対する訴追が可能な期間に関する法律

 

教授「当時はこの法律に異を唱えられる時代ではなかった」

ライネン「では今、異を唱えませんか?」

 

おっしゃる通り過ぎる。

 

それまでドヤ顔だったマッティンガー教授も、

さすがにドレーアー法が合法とは言えず、

被害者の有罪を認めざるを得なかった。

 

この映画を観ると、

ドレーアー法によって守られた戦争犯罪者への憤りが、

被害者の記憶を交えることによってより強いものとなっており、

この構成は見事に的中していると思った。

 

とても見ごたえのある法廷サスペンスだった。

 

 

②マッティンガー教授の悪態

 

ハイナー・ラウターバッハ演じるマッティンガー教授の悪役っぷりが良かった。

 

新人弁護士のライネンをなめ切った感じもそう、

被害者の過去が明らかになろうとすると買収を持ちかけてくる狡猾さ、

とにかく憎たらしい感じが良かった。

 

だからこそ、どや顔でドレーアー法を持ち出し、

それが故に自分の首を絞めることになる流れは、

観ていて痛快だった。

 

どや顔でマウントとってくれてありがとう教授。

お陰で気持ちが良かったよ。

 

 

③雰囲気が良い

 

画面の明るさもそう、

構図もそう、

全体を通じて観ていて気持ちが良い画作りだった。

 

作品の雰囲気を決して損なう事のない、

重厚な雰囲気を醸し出していて、

物語に没頭できた。

 

 

  惜しい点

 

①ポスターがなぁ、、、、

 

こんなにいい作品なのに、

ポスターのせいで損している気がした。

 

ポスターが悪いからって作品の原点にはならないけど、

もうちょっといい見せ方なかったかね。

 

このポスターを見て、

つまらなそうに思った人もいたかもしれないと思うともったいない。

 

僕は少なくとも面白そうとは思っていなかった。

 

 

  感想

 

とても満足な映画体験だった。

 

次の展開がどうなるか全く予想が出来ず、

文字通り、画面に釘付けになった。

 

しかし、コリーニの正義が証明される寸前で、

彼は自殺をしてしまうという何とも言えないラストが待っている。

 

だが、コリーニの判断が受け入れられるような気持ちにもなってしまうのも、

この作品の重厚さが持つ力かもしれない。

 

完全ノーマークからの鑑賞だったが、

この作品の完成度の高さは多くの方に鑑賞していただきたいし、

歴史を考えるきっかけになればよいと思う。

 

やはり法廷サスペンスは裏切らない。