監督:コード・ジェファーソン
主演:ジェフリー・ライト、スターリング・K・ブラウン、トレイシー・エリス・ロス、リカ・アレクサンダー、イッサ・レイ
 

「ウォッチメン」「グッド・プレイス」など人気ドラマの脚本家として活躍してきたコード・ジェファーソンが、パーシバル・エベレットの小説を原作に初メガホンをとった監督デビュー作。アカデミー賞の前哨戦として重要視されるカナダのトロント国際映画祭で最高賞にあたる観客賞を受賞して注目を集め、第96回アカデミー賞では作品賞ほか5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。

作品に「黒人らしさが足りない」と評された黒人の小説家モンクが、半ばやけになって書いた冗談のようなステレオタイプな黒人小説がベストセラーとなり、思いがけないかたちで名声を得てしまう姿を通して、出版業界や黒人作家の作品の扱われ方を風刺的に描いたコメディドラマ。

ダニエル・クレイグ主演版「007」シリーズのフェリックス・ライター役などで知られるジェフリー・ライトが主演を務め、アカデミー主演男優賞にノミネート。共演のスターリング・K・ブラウンも助演男優賞にノミネートされた。そのほかの出演者は「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」のトレイシー・エリス・ロス、「アース・ママ」のエリカ・アレクサンダー、「バービー」のイッサ・レイ。(映画.com)

 

2023年製作/118分/アメリカ
原題:American Fiction

 

 

ラストは1案目推し 

 

アカデミー賞発表の直前、
(これを書いているのは発表後だが)
ノミネート作品に触れようと思い手を伸ばしてみた。
 
面白いアプローチだったが、
ちょっと思っていたのとは違い、
ラストもふわっとしてしまっていたのが残念だった。
 

 

  グッと来た点

 

①主人公の厄介な人柄
 
本当はわかり合いたいのに、
変なアプローチをするもんだから上手く分かり合えない人。
 
いわゆる厄介ものが主人公と言うのが良かった。
 
この厄介な堅物をジェフリー・ライトは上手く表現していたので、
「こんな人いるわー」と思わず感じてしまうくらいだった。
 
特に後半の審査会で、別の作家と1対1でやり取りするくだりとか、
マジでめんどくさい奴だなぁと思った
 
頭良さそうに語りかけるけど、
それがかえって対話をややこしくし、
相手に不快感を与えると言う嫌われる典型が学べるので、
ぜひ嫌われたい方は参考にして欲しい
 
この主人公だからこそ、
偏屈で一風変わった物語になったのだと思う。
 
 
②ジェフリー・ライト
 
上でも述べているので端的に。
 
とにかくハマっていた。
 
基本偏屈だが、悪人ではなく、悪を演じるのが苦手だけど、
やれと言われれば多少できる。
 
これの極めて微妙なラインをしっかりと演じ分けていて、
プロだなぁと思った。
 
 
③どんどん不本意な方向へ
 
ゴミみたいな本を書き上げたはいいが、
それが思わぬ評価を受ける。
 
自ら生み出したゴミによって、
お金を手にする事はできたが、
不本意な名声を積み上げて行くという、
なんとも複雑な心境が皮肉いっぱいに描かれている。
 
中盤以降のコメディとも言える展開は面白かった。
 

 

  惜しい点

 

①テンポはもっと欲しかった
 
物語の本筋に入るまでが若干長い。
 
マンクの性格を描写したり、
お金が必要な状況を説明するために必要なシーンがある事は理解しながらも、
もう少しタイトに出来たらもっと楽しめた。
 
中盤以降のテンポは良かったので実に惜しい。
 
 
②ラストを「もしも」にした事
 
審査会で自身の著作が大賞を受賞し、
そこでのマンクの行動が3パターン提案される。
劇中劇のようなアプローチだ。
 
確かに面白いアプローチではあったが、
せっかくのテンションがブツっと切れてしまい、
正直いらなかった。
 
3案の中では、
個人的に1案目の「マンクが真相を語ろうとしたところで終わる」
が、1番良かったので、
それで終わってくれていればもう10点は点数が上げられた。
 

 

  感想

 

アカデミーってこういうの好きだよなぁ。
これが鑑賞後の感想だった。
 
「ど真ん中で面白い作品ではなく、こういう作品の面白さを分からないやつはダメだぜ」
みたいな、ちょっとしたマウント感すら感じてしまった。
 
作品に罪はないが、
アカデミー賞にノミネートされていることもあってハードルは上がるし、
ノミネートの割には、、、、
と言うのが正直なところだった。
 
ラストが1案目だったらその評価も多少変わっていたので、
実に惜しい作品だった。