監督:アリ・アスター

主演:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン

 

「ミッドサマー」「ヘレディタリー 継承」の鬼才アリ・アスター監督と「ジョーカー」「ナポレオン」の名優ホアキン・フェニックスがタッグを組み、怪死した母のもとへ帰省しようとした男が奇想天外な旅に巻き込まれていく姿を描いたスリラー。

日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。

共演は「プロデューサーズ」のネイサン・レイン、「ブリッジ・オブ・スパイ」のエイミー・ライアン、「コロンバス」のパーカー・ポージー、「ドライビング・MISS・デイジー」のパティ・ルポーン。(映画.com)

 

 

2023年製作/179分/R15+/アメリカ
原題:Beau Is Afraid
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2024年2月16日

 

 

まともな奴はいねーのか? 

 

癖が強いアリ・アスター監督だが、

本作は監督にしか作れない癖だらけの問題作だった。

 

やっぱりこの監督狂っとるわ。

 

 

  グッときた点

 

①先読みをあきらめるほどのとんでも展開

 

3時間。

たしかに長さは感じた。

 

だけど、

 

ゆるーい会話 ➡ とんでも展開

 

みたいな流れで物語が進んでいくので、

「次は何が起こるんだ?」という好奇心を常に刺激してくる。

 

お化け屋敷をゆっくりゆっくり歩き続けて、

いざお化けが出てきたと思ったら、

自分の思ってたのは全く違うものが出て来て、

あまりにもそれが異常な状況だったもんだから、

さらに先に進んでみたくなる感覚だった。

 

やっぱり監督は狂ってるわ。

 

 

②映像の美しさ

 

こんなにも狂っているのに画は美しい。

 

なので、画面を見ているだけで面白い。

 

森の劇場みたいなシーンもあって、

そこもかなりのこだわりが詰まっているし、

 

どのシーンも計算された画作りの元に成り立っていて、

監督の底知れぬ才能を感じさせた。

 

もうセンスが狂ってるのよね。

 

 

③出てくる奴が全員狂っている

 

ボーも含めてまともな奴が一人もいない。

むしろボーがその中では最もまともかもしれないくらい。

(そもそもこの映画にまともな奴が出てくることを期待する方が間違っているが、、)

 

そんな狂人ばかりだからこそ、

彼らが次にとる行動がまったく予測できず、

常に不穏な空気が漂っている。

 

風呂場の天井に張り付いていた奴とかどういうことよ?

 

 

中でも印象に残ったのはセラピストと、

医者のロジャー。

 

どちらもニコニコして人が良さそうなのだが、

ダークサイドを持ち合わせていて、

何とも恐ろしい雰囲気を漂わせている。

 

極めつけはボーの親父。

親父というか、

コンドームのマスコットになりそうなフォルムで、

ただの怪物でしかなかった。

 

また、序盤の方で、ボーが住んでいる街にいる奴らはとりあえず全員狂ってて、

何故ボーがあんな恐ろしい街に住んでいるのかも全く意味が分からなかった。

 

そのボーの街では道端で取っ組み合って、

相手の目をつぶし続けている奴がいた。

 

結局こいつが一番狂っていたわ。

 

 

  惜しい点

 

①やっぱちょっとダレる

 

刺激的な3時間ではあるが、

ずーっと面白いわけではなく、

やはりだるさもある。

 

森のシーンはもうちょっと削っても良かったかな。

 

あと、ゆるーい会話も、

とりあえず意味不明なので、

もちろんそれについていこうという気も起らないもんだから、

会話早く終わってくんないかなぁって思ってた。

 

 

  感想

 

とはいえ、ものすごく刺激的な映画であることは間違いない。

 

映画館で僕のちょっと前に座っていたカップルが、

上映後、お互いの顔を見て何も話せない状態になっていたのがそれを表している。

 

余程趣味嗜好があっていて、

ちゃんと上映前にこれから何を見るのか「合意」が出来ていないようであれば、

これをカップルで見ることはおススメしない。

 

行きたい奴はひとりで行け!

 

さもなければ、

気の毒な3時間を味わうことになる。

 

 

とくにこの映画では母親に対する激烈な思いがいろいろ込められていた。

 

細かいことは割愛するが、

それが監督自身の経験によるものだとすれば、

大分歪んだ愛情の元で育ったことになる。

 

いずれにしてもボーは最終的にコロシアムみたいな場所に迷い込み、

裁判風のやりとりで母親サイドにボコボコされ、

ボーは爆発した舟の上から投げ出され(おそらく溺死)、

乗り手を失い転覆した舟が映し出されてエンドロールへ。

 

なんなのこれは?

 

最後まで意味が分からなかったが、

とにかくすごいものを見た。

 

相当に好き嫌い別れる作品なので、

用法用量を守って正しくお使いください。