監督:ドミー・シー
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」など数々のヒット作を生み出してきたピクサー・アニメーション・スタジオによる長編アニメ。親の前で本来の自分を抑えていることに悩む少女メイが、ある日突然レッサーパンダに変身してしまったことから起こる騒動や、変身の裏に隠された秘密を描く。監督は、ピクサーの短編「Bao」を手がけ、アジア系女性で初めてアカデミー短編アニメーション賞を受賞したドミー・シー。
伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの少女メイ。母親の前ではいつもマジメで頑張り屋でいる彼女だったが、本当は流行りの音楽やアイドルも大好きで、恋をしたり、友達とハメをはずして遊んだり、やりたいこともたくさんある。母親の前で本当の自分を隠す日々を送るメイは、本当の自分がわからなくなり、感情をコントロールすることができなくなってしまう。悩んだまま眠りについた彼女は、翌朝目を覚ますと、なんとレッサーパンダになっていた。突然のことに驚くメイ。しかし、その変身の裏にはある秘密があった。
Disney+で2022年3月11日から配信。第95回アカデミー長編アニメーション賞ノミネート。2024年にはコロナ禍で劇場公開が見送られた他のピクサー作品とともに劇場公開が実現。(映画.com)
2022年製作/100分/アメリカ
原題:Turning Red
配給:ディズニー
劇場公開日:2024年3月15日
その他の公開日:2022年3月11日(日本初公開)
臭いもパンダはやだなぁ
これはかなり変化球。
ただ、僕にとってはストライク!
様々な要素を鍋にぶち込んで、
どんなものができるかと思ったら、
しっかりアドベンチャー&ハートフルな仕上がりだった。
グッと来た点
①キャラの尖り具合
人間ばかりなのに、
それぞれのキャラがメチャメチャ尖ってて、
キャラの作り込みが素晴らしいと思った。
主人公のメイに至っては、
本当にその辺りにいそうな普通の女の子。
このメイを普通のスタジオは主人公にできるか?
日本の売れているアニメーション界隈では、
メイみたいな主人公は見ない。
みんな可もなく不可もない、
誰が見ても可愛いとか、
綺麗っぽいキャラばかり。
現実世界ではむしろ少数派の部類の主人公の方が多いのだ。
僕はメイのような普通の少女が主人公である時点でこの作品は勝ちだと思った。
②先の読めないストーリー
最後の母パンダとメイパンダの戦いとか、
全く予想できなかった。
さらには親戚一同パンダになるとかも面白かった。
これだけいろんな要素を入れ込んでしまうと、
普通は収集つかなくなるところを、
ちゃんと面白いアニメに昇華させていた見せ方はすごい。
13歳の女の子、
仲間、アイドル、中華、
呪術、パンダ、母と娘の確執、
Q:「これらの要素を入れて面白い物語を作ってください」
、、、、むずいわ。
③パンダで生きる
メイはラストでパンダを受け入れて、
パンダと共に生きていく選択をする。
普通はパンダを切り離してハッピーエンドと行くところを、
パンダを受け入れて、
パンダを呼び水に商売をしてスタジアムの借金を返していくという結末。
これは物語的に勇気がいる選択だと思ったが、
同時に個性を受け入れる話に思えた。
パンダ=コンプレックス
現代でコンプレックスはネガティブの対象だが、
「コンプレックスを受け入れて武器に変える」
そんなポジティブなメッセージに思えた。
現実だったら、興奮してパンダになっちゃうと、
結構いろんなシーンで困りごとが発生する。
プレゼンとか、告白とか、
ディベートとか、スポーツ観戦とか、
僕がメイなら、考えるだけでもパンダになりうるシチュエーションが数多あるとすると、
メイはなかなか尖った選択をしたもんだ。
(アニメだっつーのよ!真に受けんな!)
感想
かなりチャレンジングであり、
そのチャレンジが出来るピクサーの強さを象徴する作品だった。
こうやったら売れるだろう、
こうやったら炎上しないだろう、
もちろん製作陣も気にしているだろうけど、
この作品は間違いなくチャレンジしている。
チャレンジにリスクはつきものなので、
賛否はあるだろうけど、
僕は圧倒的にこの作品は支持したい。
ワクワクさせてくれたし、
「ちょっと30分だけ観よっかな」と思って観始めたら、
気づいた時にはエンドロールになっていた。
コンプレックスの話とは別のレイヤーで、
「批判を恐れずに挑戦する」
というスピリッツをハチャメチャな物語を通して制作陣から受けとった気がした。
ちなみに、もし仮にパンダになれたとして、
モフモフは良いけど、
汗臭い臭いがするのはちょっと嫌だな。