監督:ダーレン・アロノフスキー
主演:ブレンダン・フレイザー
 

「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督が、「ハムナプトラ」シリーズのブレンダン・フレイザーを主演に迎えた人間ドラマ。劇作家サム・D・ハンターによる舞台劇を原作に、死期の迫った肥満症の男が娘との絆を取り戻そうとする姿を描く。

40代のチャーリーはボーイフレンドのアランを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで健康を損なってしまう。アランの妹で看護師のリズに助けてもらいながら、オンライン授業の講師として生計を立てているが、心不全の症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し続けていた。自身の死期が近いことを悟った彼は、8年前にアランと暮らすために家庭を捨ててから疎遠になっていた娘エリーに会いに行くが、彼女は学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた。

272キロの巨体の男チャーリーを演じたフレイザーが第95回アカデミー賞で主演男優賞を受賞。メイクアップ&ヘアスタイリング賞とあわせて2部門を受賞した。共演はドラマ「ストレンジャー・シングス」のセイディー・シンク、「ザ・メニュー」のホン・チャウ。(映画.com)

 

2022年製作/117分/PG12/アメリカ
原題:The Whale
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2023年4月7日

 

 

まさに重量級 

 

凄まじいものを観た。
 
ずっとチャーリーの部屋のみで展開される2時間ってどうなんだろうって思っていたが、
その心配は杞憂に終わった。
 

 

  グッときた点

 

①ブレンダン・フレイザー
 
演技が上手いとかそんなんじゃなくて、
チャーリーの悲しみそのものを全身で表現していた。
 
そのレベルがもはや演技を超えていて、
チャーリーという人の人生を2時間の中で見せる圧倒的なものだった。
 
過去の自分の行動に後悔をしながらも、
娘の幸せを願う姿がとても息苦しく、
チャーリーという人の今までの人生が、
その演技から痛いほど伝わってきた。
 
オスカーも納得の表現力だった。
 
 
②ワンシチュエーションで見せ切る
 
カメラは99%チャーリーの家にある。
 
それでどう物語が展開するのかと思ったら、
娘、宣教師、妻、元恋人の妹が入れ替わり立ち替わりチャーリーの部屋を訪れ、
会話だけで過去の物語も見せ切る。
 
この演出力はすごい。
 
2時間ワンシチュエーションなんて、
ミステリーやサスペンスのようなハラハラドキドキの展開じゃないと退屈なものだが、
この作品の2時間は、
それに匹敵するほどヒリヒリした緊張感を保ち続ける。
 
監督の今までの技術が詰め込まれた濃密な内容だった。
 
 
③チャーリーのメイク
 
ブレンダン・フレイザーの演技を支える特殊メイク。
これはもはやメイクなのか?
 
というレベルで、
こちらもメイクの枠を超えた一つの作品だった。
 
このメイクがあったからこそ、
チャーリーの存在をリアルにして、
映画のレベルをグンっと押し上げている。
 

 

  惜しい点

 

①ラスト
 
ラストでは娘の書いた白鯨のエッセイが読み上げられる。
 
娘が過去に書いたエッセイを読み、
それを聞きながらチャーリーは立ち上がり娘に近づく。
 
娘との距離が縮まり、
エッセイが読み終わると、
足が浮いて、
画面が真っ白に。
 
これで終わる。
 
最後、足が浮いて天に召される演出なんだろうけど、
ここまでがとても現実的だったので、
ちょっとファンタジー感が出てしまった。
 
それでも涙腺崩壊はしていたが、
最後の最後で「あれ?」と、
余計な事に思考が持ってかれてしまったのは勿体なかった。
 

 

  感想

 

ブラック・スワン」「マザー!」と決して人に薦めることが出来ないけど、

心にガツーン!と、

衝撃を与えてくるダーレン・アノロフスキー監督の衝撃が再びという作品だった。

 

一筋縄ではいかなそうだったが、

その感は間違っていなかった。

 

画面のサイズも4:3のスタンダードサイズで、

チャーリーの窮屈さがその画面サイズでうまく表現されている。

 

またしても最後の最後でポカーンと置いてけぼりにされた気分になったが、

苦しみでエグられた結果、

実に良いやられ感と疲労感。

 

一癖も二癖もある内容で万人受けはしないが、

衝撃を味わうには刺激的な一本だと思う。

 

あーしんどかった。