監督:西川美和
主演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、橋爪功
「ゆれる」「永い言い訳」の西川美和監督が役所広司と初タッグを組んだ人間ドラマ。これまですべてオリジナル脚本の映画を手がけたきた西川監督にとって初めて小説原案の作品となり、直木賞作家・佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった小説「身分帳」を原案に、舞台を原作から約35年後の現代に置き換え、人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描く。殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司らの助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田とやり手のプロデューサーの吉澤が近づいてくる。彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていたが……。(映画.com)
2021年製作/126分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2021年2月11日
すばらしくもなんともない世界に
13年間も獄中にいた男が見たもの。
それは、なんの脚色もないリアルな世界。
そこには確かに「すばらしき世界」があった。
グッと来た点
①俳優、役所広司
難しい役どころをストレートに見せつけられた。
演技と分かっていながらも、
その所作、感情、体から放つオーラ。
その全てで三上を体現していた。
役所さんだからこそ、
この役に命が吹き込まれていたのは疑いようがない。
それほどのプロの仕事だった。
②物語
決してただのハッピーエンドではない。
しかし、刑務所を出所し「今を生きようとする男:三上」と、
「三上を支えようとする人たち」の想いが交差する絶妙な語り口が良かった。
自由であるはずの世界に放たれた三上は苦悩し、戸惑い、怒りをぶつける。
世間は決して甘くはないが、
正直に、真っすぐに生きていたら、
誰かが手を差し伸べてくれる。
刑務所には存在する壁。
この生きづらくも険しい世の中に「それ」は存在しない。
この明と暗の絶妙なバランスを、
よくも2時間で描き切ったものだと、
西川監督の脚本に唸らされた。
③三上を取り巻く人々
三上には彼を支えたいと思う人たちがいた。
「三上さん、頑張って。三上さんには残りの人生を謳歌して欲しいんだ。」
そんな思いが聞こえてくるような、
人々のやさしさ。
スーパーの店長、役場の担当者、三上を取材していたスタッフ。
そんな点であった人たちが、
三上を通じて出会い、
そして三上を支え、
いつしか線につながっていく。
どこもかしこも「すばらしくない世知辛い世界」なのに、
赤の他人がこんなにも優しい気持ちで接することが出来るなんて。
本当の優しさとは何かを思い知らされた。
惜しい点
①とはいえ、三上に生きてて欲しかった
就職が決まり、まっとうに生きはじめていた矢先、
病気で命を落とすことになってしまった三上。
就職先の介護施設では、
職員同士のいじめや、
元ヤクザ、障害者への誹謗・中傷にもグッと気持ちをこらえて、
支えてくれた人たちの気持ちに応えようとしていたのに、
西川監督、そりゃないぜ、、、、。
物語的には、作品で描かれた内容が一番の着地点だったかもしれないが、
個人的には三上がこれから始まる本当の「すばらしき世界」を歩いていく姿が見たかった。
感想
こんなにも生きることがつらく苦しいとは。
しかし、同時にこんなにも今生きている世界が「すばらしい」ものだとは。
その表裏一体をギュッと凝縮した、
とても濃密な2時間だった。
生きる上での「すばらしさ」とは何なのか。
表面的には見えてこない、
本当の人間らしさ、本質的な人間らしさが、
この物語には存在している気がした。




