監督:阪元祐吾
主演:高石あかり、伊澤彩織
 

社会不適合者な殺し屋の少女たちが、社会になじむため奮闘する姿を描いた異色青春映画。高校卒業を目前に控えた女子高生殺し屋2人組のちさととまひろ。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たちは、高校を卒業したらオモテの顔として社会人をしなければならない現実を前に、途方に暮れていた。2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪となっていった。殺し屋の仕事は相変わらず忙しく、ヤクザから恨みを買ったことから面倒なことに巻き込まれてしまい……。ちさと役を高石あかり、まひろ役を伊澤彩織がそれぞれ演じる。監督は「ファミリー☆ウォーズ」「ある用務員」の阪元裕吾。(映画.com)

 

2021年製作/95分/PG12/日本
配給:渋谷プロダクション
劇場公開日:2021年7月30日

 
 

ユルふわな日常✖️痛快ガチアクション 

 

ずっと見たかった本作がアマプラにアップされていたので飛びつきました。
 
なんで劇場に行かなかったのか。
 
これ、最高じゃんか。
 
アクション映画という枠で見たら、
ラストのタイマンとか、
ハリウッド超えるレベルのガチアクション。
 
痺れました。
 

 

  グッときた点

 

①超近距離戦で繰り広げられるアクション
 
本作ではアクションが絶賛されているが、
実はアクションシーン自体はそれほど多くない。
 
感覚的には100分中、20分ほどかな。
 
だが、そのアクションがキレッキレ。
 
冒頭のコンビニのシーンから、
この映画が他のアクション映画と一線を画していることを証明してくれる。
 
さらに、最高潮はラストのまひろと渡部(三元雅芸)のタイマン。
本当に殴りに行くつもりでなければ見せられないような手数の連続。
 
映画「るろうに剣心」を想起させるような、ハイスピードの殺陣。
個人的な体感としては、るろ剣よりも興奮は上をいっていた。
 
それを高速でかわし、いなし、反撃する。
 
ボクシング映画で殴ってるっぽいだの、
当たってないだの言っていた自分が恥ずかしい。
 
もはや、芸術の域と言わんばかりのアクションに、
日本映画の、しかも低予算でここまで出来るのだと胸が熱くなった。
 
伊澤彩織のアクション演技は本当に素晴らしいものだった。
 
 
②「ちさと」と「まひろ」の魅力
 
アクション以外は2人の社会不適合っぷりと、
ダラダラした彼女たちの日常が描かれる。
 
最初は、この2人で映画として成立するか?
 
と、若干不安でもあったが、
徐々にそれが誤った感覚であることを思い知らされる。
 
2人の殺し屋としての仕事っぷり、
愛嬌のあるチャランポランでダメダメなふるまい、
シーンを重ねるごとにどんどん2人の魅力が引き出されていき、
最後はこの2人じゃなきゃダメだ。
 
と思えるほどに。
 
たった、100分でここまで魅力的な描写をしてくれたことが素晴らしいと思った。
 
逆に3時間越えの映画ですら魅力を伝えきれないことがあるくらいなので、
もはやお手本にして欲しいくらいの濃度だった。
 
 
③掃除屋の田坂さん
 
こういう人いる!!
 
でも、ちゃんと仕事できるから仕事は任されるんだけど、
「好感表現力」が乏しすぎて
体全体から嫌味が飛び出している。
 
田坂さんの気持ちもわからなくもない。
だけど、出来る事なら関わりなくないという絶妙なキャラクターだった。
 
 
④2人がラストバトルに向かう際のポーズ
 
ダラダラした会話の中で、
いきなり二人が息ぴったりで銃を構えるシーンがある。
 
これが最高にクールでここに述べておかないわけにはいかなかった。
 

 

  惜しい点

 

①もうちょっとアクションが見たかった
 
まー、贅沢な要望なのは承知している。
 
ただ、もうワンシーン、
同様のクオリティでアクションがあったら、
さらにテンションが上がったのは間違いない。
 
 
②高校生という設定
 
正直、主演の二人の年齢を考えると、
大学生という設定で良かった。
 
もしくは、高卒で社会復帰しようとしているくらいでも良かった。
 
高校生にしては大人の雰囲気は隠しきれなかった。
 
 

  感想

 

低予算で製作された作品としては、
ほぼ満点の出来だと思った。
 
コンセプトも良いし、
何より緩和から突如訪れる緊張が素晴らしい。
 
それまでのユルふわが嘘のようにバキバキのアクションを繰り広げる。
 
最後の廃墟に侵入した際に、
おかっぱの強そうな刺客が現れるのだが、
「かかってきなよ」と挑発するおかっぱに対して、
金的からアッパーをかまし、
よろけた所をヘッドショットで瞬殺する痛快さは、
この作品の良さを凝縮したシーンだった。
 
この容赦のなさがとてもスカッとする。
 
スプレッター映画は苦手な方なので、
残虐が好きとかではないのだが、
こちらの先を行くほどの遠慮のなさが、
かえって心地よく、清々しさすら感じた。
 
こうして個人的には続編も必見となったわけで、
レンタルしてでも見る価値しかないと思った。
 
9か月に及ぶロングランだったそうだが、
納得の一本だった。
 
この映画を見て、「ちさと」と「まひろ」に一気に心を奪られてしまった。