監督:ニール・ブロムカンプ
主演:アーチー・マデクウィ、オーランド・ブルーム、デビッド・ハーバー
 

世界的人気を誇る日本発のゲーム「グランツーリスモ」から生まれた実話をハリウッドで映画化したレーシングアクション。
ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。想像を絶するトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、ついにデビュー戦を迎える彼らだったが……。
主人公ヤンを「ミッドサマー」のアーチー・マデクウィ、GTアカデミーの設立者ダニーをオーランド・ブルーム、指導者ジャックをデビッド・ハーバーが演じる。監督は「第9地区」のニール・ブロムカンプ。実在のヤン・マーデンボローがスタントドライバーとして参加している。(映画.com)

 

2023年製作/134分/G/アメリカ
原題:Gran Turismo
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
劇場公開日:2023年9月15日

 

 

師弟関係に震える 

 

面白かった!
 
ニール監督といえばSFというイメージだったが、
しっかり重厚感のあるF-1映画を作ってくれた。
 
ゲーム発信とはいえそんなライトな話ではなく、
親子の葛藤、コーチとの関係、恐怖との向き合い、成長物語、それらがギュッと詰まったエンタメ作品だった。
 

 

  グッと来た点

 

①レースが熱い
 
前半こそドラマ中心だが、
いざ本当の戦いが始まると、
そこからはレース!レース!レース!
 
観客が1番見たいレースシーンが次々に繰り広げられ、
マシンの重厚感をビシビシ感じさせながら物語も加速していく。
 
このレースシーンがカッコよくて、
ゲームの演出も織り交ぜながら、
迫力あるシーンを次々に見せつけてくる。
 
散々引っ張って最後の最後でレースシーンなんて安売りはせず、
これでもかとレースシーンを持ってくる流れに興奮が冷めることはなかった。
 
 
②親の気持ち
 
父親はサッカー選手として活躍していた。
子供であるヤンにも同じように体を動かすアスリートになる事を願うがヤンはゲームに没頭。
 
父からしたら「ゲームなんて所詮は子供のやる事」という感覚で、
ヤンの個性を不安視する。
 
しかし、ヤンがレーサーとして力をつけていくうちに父親はヤンを認めていく。
 
ヤンが事故から復帰したとき、
涙を流しながら息子と向き合う父親。
 
そのトーンを抑えた演技に共感しまくり。
僕も父親の気持ちで泣いていた。
 
 
③コーチとの関係
 
ゲーマーに対して、
最初は「本物のレースは甘くない!」と、
レースの厳しさを説き、
厳しいトレーニングを科すコーチ・ジャック。
 
そんな鬼コーチも次第にヤンのセンスを認めていく。
 
事故を起こし、観客を巻き込んでしまったことに落ち込んでいたヤンに対して、
ジャックは自身の過去を語り、
ヤンのレース復帰をサポートする。
 
レースの厳しさを知っているジャックだからこそ、
ヤンの気持ちを理解し、
レースになればヤンと気持ちを共にして戦う。
 
レジェンドと呼ばれたジャックが、
相手にもされなかったゲーマーチームを率いて、
強敵を倒しまくる様は痛快だった。
 

 

  惜しい点

 

①欲を言えばもうちょっとレースをみたかった

 

レースシーンが格好良いので、

なんならもうちょっとレースシーンの駆け引きを楽しみたかった僕がいた。

 

あと5~10分でも良い!

 

そのくらいのちょい足しでも構わないので、

レースの世界へ放り込んで欲しかった。

 

 

②デートシーンの恥ずかしさ

 

ちょいちょい日本の街並みが出てくる。
ヤンとオードリー(ヤンの彼女)が日本でデートをするのだが、
「こんなに日本の夜の街って映画映えしないんだ笑」と思った。
 
華やかな感じは出しているものの、
結構見慣れた街の風景に、
デートシーン風の曲が流れて雰囲気を作っているものだから、
違和感というか、ちょっと恥ずかしさすら感じた。
 
もちろん、日本は大好きだし、
海外から見たらこれが「COOL」なんだと思うが、
余りにも映えない感じがぬぐい切れず、

デート中の二人に集中できなかった。

 

とはいえ、珍しく日本が正しい描かれ方をしているので、

マイナスということはなかったが、

日本を知り過ぎている身からすると

別の所でくすぐったい思いをしていた。

 

③ポスターがダサい

 

作品の内容とは関係ないので、

これが映画の評価を落とすという事ではないのだが、

もうちょっと何とかなったろうというのが正直なところ。

 

 

  感想

 

なんだかんだ書いたがマイナス点はほぼ感じなかった。
(ポスターにいちゃもんをつけてるくらいなので)
 
レース映画として、
やれることはちゃんとやったという印象だった。
 
テンポが良いので、
「どこを削れば面白くなるか」ということを、
相当計算したのではないかと思われる取捨選択がされていて、
「早く次行ってくれよ」感はなかった。
 
 
オーランド・ブルームが出ているのだが、
最初気付かなかった。
(映画を見てこのブログを書くタイミングで分かった)
 
最初のプレゼントとか、
「よくこれで通ったな」と思うほどの薄い内容だったので、
最後まで胡散臭い安物の詐欺師感を感じ続けていた。
 
そのくらい小物感がプンプン臭うものだから、
「あれ、オーランド・ブルームだったの!?」
と、ちょっと驚くくらい元海賊の雰囲気はどこにもなかった
 
 
 
映画の肝。
それはヤンとジャックの関係だろう。
 
ジャックの突き放す指導にヤンが喰らいついていき、
次第にジャックは彼を認め、ヤンも信頼していく。
 
その状況が心地よく、
しっかりと成長の階段を上がっていくヤンに、
ジャック同様にエールを送っていたし、
ジャックと一緒に戦況に一喜一憂できた。
 
 
つい先日、この映画を見たという車業界の方と話をした際に、
彼の家にもヤンの家にあったようなグランツー(GT)専用のコックピットのようなゲーム環境があった。
 
車を専門に扱っている彼からしても、
GTは本当によく出来ているそうで、
ハンドル(約20万)にも車種ごとの感触の違いが伝わって来るそうだ。
 
それを聞いて、
ゲーマーが本物レースで勝つという夢のようなこの話が、
本当に夢ではないことを改めて実感した。
 
好きこそものの上手なれ。
 
その最たるが詰まった作品だった。