監督:西浦正紀、中田秀夫
主演:役所広司、竹野内豊、小日向文世、小林薫、音尾琢真、光石研、石田ゆり子、遠藤憲一
 
2011年、福島第一原発事故。史上最悪の事故は避けようのない天災だったのか、人のおごりが招いた人災だったのか?彼らは英雄か、罪人か?政府、会社組織、そして現場で命を懸ける者たち。極限状態で露わになる人間の本性を、それぞれの視点から炙り出す。(Fimarks)
 

守りたいもの 

 

 

鬼気迫る物語だった。
後半は涙が溢れた。
 
ベースとなる調書や書籍をもとに、
本当に丁寧に描いていたと思う。
 
 
以前「Fukushima 50」を見たが、
この原発事故を語るには、
2時間の映画ではとても語り尽くせなかった。
 
それを、この作品を見て痛感した。
 
 
僕は震災当時は池袋の会社で働いていた。
 
7階のオフィスは大きく揺れ、
すぐに避難を余儀なくされた。
 
そこから徒歩で新宿まで歩き、
運良く動いていた電車に乗り、
深夜2時に自宅に到着して眠りについた。
 
 
まさにそのとき、
福島第一原発は戦場と化していた
 

 

  心に残った点

 

①血しか通っていない
 
登場人物は全員普通の人だった。
でも、震災によって物語の主人公となった。
 
彼らは英雄とも言われているが、
なろうと思ってなったわけではない。
 
誰もが現場を去り、
家族のもとに戻りたかった。
 
でも、やらなきゃ行けない。
 
そんな状況で僕だったらやれるだろうか?
 
 
現場に残った数十人が家族に連絡を取るシーンがある。
 
もしもの時の別れを伝えているのだ。
 
そのメールの内容はごくごく自然な内容だが、
その内容に込められた意味が深く、
真に迫るものがあった。
 
 
このように、
この作品には現場にいるそれぞれの自然の感情が、
そのまま描写されている。
 
だからこそ、そこに血が通っているし、
見ているこちらが常に「お前ならどうする?」と、
問われているような気がした。
 
 
②演技、演出への執念
 
それぞれの俳優がベストを尽くし、
この作品を後世に残そうという製作陣の強い想いが画面隅々まで広がっていた。
 
演技について、
主演の役所広司はもちろん素晴らしいが、
特に竹野内豊の演技は胸にくるものがあった。
 
 
また、震災の表現は相当議論があったことを察した。
 
ただでさえ題材が題材である為、
何をやっても誰かにとっては見ていられない表現となりえる。
 
 
事実を伝えなくてはならないが、
だからと言って誰かを傷つけたいわけではない、
かと思えば、ドラマとして一定の表現も必要であるところの、
難しいバランスを取りながらも迫力ある映像表現にチャレンジしていると思った。
 
 
③危機におけるリーダー像
 
この作品には、
さまざまな形でリーダー像が描かれている。
 
現場指揮官である吉田所長、制御室の前島、
さらに内閣総理大臣、東電経営陣、
自衛隊のチームリーダーなどだ。
 
特に現場と政府のリーダーは、
対照的に描かれていると感じた。
 
吉田所長が自らの命をかけて、
チームを鼓舞し、
チームメンバーの命を守ろうとしていたのと対照的に、
 
東総理は、現場を怒鳴り散らかし、
物言えない部下を作り、
何を守ろうとしているのかわからない状況。
 
危機的状況におけるリーダーのあるべき姿が何であるか、
この作品から学べることが多かった。
 
 
これがほぼ事実であるのなら、
当時の総理大臣はこの危機に何をしていたのだろうか?
 
 
本店に殴り込んできた総理のお説教に対して、
モニター越しにズボンを下ろし、
尻を掻いた吉田所長の心境は僕も同じで、
ただただやる気を削がれるだけだった。
 
こんな人間が日本のリーダーであった事が恥ずかしくなった。
 
 

  感想

 

物語は8話に分けて描かれ、
震災の現場だけではなく、
 
事故によって息子を失った家族や、
現場に駆け付けた自衛隊の苦闘など、
 
映画1本では表現できない様々な視点を交えて、
この未曽有の事故を描いている。
 
 
だからこそ、物語に厚みがあり、
その悲しみや、悔しさの理由がストレートに伝わってくる。
 
 
最後は日本の高度経済成長期を支えた原発の立ち位置を示しながらも、
それが果たして本当に良かったのかという問題提起を投げかけている。
 
 
後半で明かされることになる「日本崩壊のシナリオ」。
 
 
もし、原発の暴走が止まらなかったときは、
東京、神奈川、千葉の首都圏を含め、
今後数十年にわたり人間が住めない土地になっていたという。
 
 
原発の是非を問う議論は終わることはない。
 
 
ただ、今、こうして当たり前のように生活できていることは、
原発に残り、原発と戦った方々がいたからこそ存在するもので、
その事だけ決して忘れてはならないと思った。