監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン

 

ピーター・パーカーの遺志を継いだ少年マイルス・モラレスを主人公に新たなスパイダーマンの誕生を描き、アカデミー長編アニメーション賞を受賞した2018年製作のアニメーション映画「スパイダーマン スパイダーバース」の続編。
マルチバースを自由に移動できるようになった世界。マイルスは久々に姿を現したグウェンに導かれ、あるユニバースを訪れる。そこにはスパイダーマン2099ことミゲル・オハラやピーター・B・パーカーら、さまざまなユニバースから選ばれたスパイダーマンたちが集結していた。愛する人と世界を同時に救うことができないというスパイダーマンの哀しき運命を突きつけられるマイルスだったが、それでも両方を守り抜くことを誓う。しかし運命を変えようとする彼の前に無数のスパイダーマンが立ちはだかり、スパイダーマン同士の戦いが幕を開ける。
オリジナル英語版ではシャメイク・ムーアが主人公マイルス、ヘイリー・スタインフェルドがグウェン、オスカー・アイザックがミゲルの声を担当。(映画.com)

 

2023年製作/140分/G/アメリカ
原題:Spider-Man: Across the Spider-Verse
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

 

 

アニメ映画の到達点 

 

 

とにかくとんでもない映画だった

 

 

中盤から後半の展開が怒涛過ぎて、

興奮が止まらなかった。

 

 

2時間越えのアニメなので一定の長さは感じたものの、

この物語を語るうえで必要な長さだったし、

後半なんて「おいおい!この先どうなるんだ?」

の連続で前のめりになり、

 

2時間20分の上映時間なのだが、

それよりも体感は短く感じた。

 

 

 

  グッと来た点

 

①物語の描き方

 

とにかく物語に引き込まれる。

 

大切な人の死と向き合わなければならないという、

スパイダーマンの宿命。

 

それはマルチバースに生きるスパイダーマン全てが味わう悲しい運命。

 

 

だが、マイルスはそれに抗おうとする。

 

 

その結果、たくさんのスパイダーマンと戦うことになってしまうのだが、

マイルスの気持ちも、グウェンの気持ちも、

それまでのフリが効いているからちゃんと理解できる。

 

このフリがあるから2時間を超える作品になっているのだが、

このフリがあるからこそ、

物語が重厚かつエキサイティングなものとなっている。

 

 

また凄いのが、

これだけ複雑そうな物語をわかりやすく見せているところだ。

 

どこかで物語の本筋を見失ってしまうかと思いきや、

ちゃんと理解できるように誘導してくれるので、

物語に集中できる。

 

この構成も素晴らしかった。

 

 

おかげでマイルスやグウェンという思春期真っただ中の若者の苦悩と、

家族への想いがふんだんに詰まった物語に没頭できた。

 

 

 

②それぞれの世界が描き分けられている

 

マルチバースはそれぞれ絵のタッチ描き分けられている。

 

それによって世界の違いを表現しているのだが、

これが相当イケている。

 

ロックミュージシャン風のスパイダーマンは、

どこかセックス・ピストルズを思わせるような雰囲気だったり、

 

レゴの世界があったり、

実写版の世界があったりして、

マルチバースという材料を最大限に料理している。

 

 

ちなみに、つい最近「ザ・フラッシュ」を見て、

「マルチバースはお腹いっぱい」と書いたもんだが、

このマルチバースの使い方は大正解だと思った。

 

 

キャラの描き分けの話に戻ると、

異なるタッチの絵が一つの画面に映る場面では、

それはそれでとにかく絵になる。

 

本当に計算しつくされた表現だった。

 

 

③圧倒的センス

 

何から何までセンスの塊だった。

 

前作「スパイダーマン スパイダーバース」において、

その表現はすでに確立されていた。

 

しかし、そのレベルをさらに一つ上げてきたのがこの作品。

まさにハイ・スタンダード

 

 

こればっかりは見て感じてもらわないと伝わらないので、

ここがこうで、これがこうだから、

みたいなことはもはや必要ないが、

 

どうやったらこんな表現を形に出来るのだと、

脱帽しっぱなしだった。

 

 

ちなみに僕は吹き替え版で見たのだが、

断然吹き替えがおススメ。

 

字幕だと画面の情報量が多すぎて、

字幕に追われて細部を追えなくなるため、

 

センスを堪能するのであれば、

絶対吹き替え!

 

 

 

  感想

 

もう次の「スパイダーマン ビヨンド・ザ・スパイダーバース」が待ちきれない。

 

 

来週やってくれても良い!

 

 

それくらい、一番面白そうなところで終わったので、

 

「くぅ~!!!次が見て~~~!!」と思いながらも、

 

本作の濃度に対する納得感が十分にあったので、

この胸の高まりは来年まで持ち越そうと思う。

 

 

 

日本はアニメ大国と言われているが、

これだけの作品を出されると、

クリエイティブにおける格の違いは一目瞭然だった。

 

日本のアニメのクオリティがここまで高まれば十分勝負できるコンテンツはたくさんある。

 

だが、それを形する「仕組み」に差があることを痛感した。

 

 

来月は宮崎駿監督のおそらく最後の作品も公開になる。

日本のレジェンドは最後にどれだけのものをぶつけてくれるのか。

 

何も情報が無いのでわからないが、

胸躍る素晴らしい作品であって欲しい。

 

 

そんな身内のジャパンをつい応援したくなるほど、

本作は完璧な作品だった。

 

 

前作を見てなくても追うことは出来るけど、

やっぱ見ておいた方が良い。