監督:ベン・アフレック
主演:マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマン、ビオラ・デイビス
「アルゴ」のベン・アフレックが盟友マット・デイモンを主演に迎えてメガホンをとり、ナイキの伝説的バスケットシューズ「エア・ジョーダン」の誕生秘話を映画化。
1984年、ナイキ本社に勤めるソニー・ヴァッカロは、CEOのフィル・ナイトからバスケットボール部門を立て直すよう命じられる。しかしバスケットシューズ界では市場のほとんどをコンバースとアディダスが占めており、立ちはだかる壁はあまりにも高かった。そんな中、ソニーと上司ロブ・ストラッサーは、まだNBAデビューもしていない無名の新人選手マイケル・ジョーダンに目を留め、一発逆転の賭けと取引に挑む。
CEOフィル・ナイトをアフレック監督が自ら演じ、主人公ソニーの上司ロブ役で「モンスター上司」のジェイソン・ベイトマン、マイケル・ジョーダンの母デロリス役で「フェンス」のビオラ・デイビスが出演。(映画.com)
2023年製作/112分/G/アメリカ
原題:Air
配給:ワーナー・ブラザース映画
靴はしょせんただの靴
面白かった。
まだシェアが17%くらいの頃のナイキの話。
エア・ジョーダンといえば、
名前だけでも聞いたことがある人も多いかもしれないが、
「歴史的な1足にこんな話があったなんて」というのが、
しょっぱなの感想だった。
グッと来た点
①ソニーの行動力
20年のキャリアを捨ててでもジョーダンとの契約を信じ、
行動した行動力がかっこよかった。
今でこそ、マイケル・ジョーダンは伝説だが、
当時はまだ高校生。
そんな高校生に会社の命運をかけさせたソニーの行動。
さらに、ジョーダン一家を前にして彼が伝えたプレゼン。
これは本当にそういうことを言ったのかわからないが、
確かにこんなこと言われたら刺さるし、
ナイキという看板があるからではなく、
一人の人間としてジョーダンが本物だということを説得した、
心に刺さるプレゼンだった。
②フィル・ナイトが悩める経営者であった事
上場し、役員会や株主に対して、
説明責任を果たさなければならない立場からか、
ソニーの提案に対して、
当初フィルは及び腰だった。
いきなり「それいいね!やろうぜ!」ではなく、
「ふざけんな会社つぶす気か!」と、
生身の人間だからこそ、
不安と戦いながら会社経営している不格好なフィルの描き方が良かった。
だからこそ、
「靴の売り上げの一部をジョーダンに還元する」という、
ジョーダンの母親からの逆提案に落胆したソニーに対して、
フィルが「わかった、やろうぜ」と言ったところはグッと来たし、
この決断が出来たからこそ、
ナイキの今があると思う。
会社経営っていうのはつくづくドラマの連続だと思った。
③エア・ジョーダンの制作過程
靴を作る過程も面白かった。
それぞれが意見を出し合い、
最高のものを求めていく。
この時、NBAの規定で白の割合が一定でないと罰金が発生するというルールがあったが、
それを承知で新しいデザインを作り上げていった。
既成概念をぶっ壊す考えが新しい時代を作って行くという意味で、
靴のデザインも、選手との収益分配も、
ナイキは改革を実行した。
こういう決断が、
魅力的な製品を作るんだよなぁと、
クリエイターの情熱を感じ、
気持ちが高まった。
④マイケル・ジョーダンの顔を写さない。
この映画に出てくるジョーダン役の俳優は顔が映らない。
それは、世界中の誰もが彼の顔を知っているから、
顔が映った瞬間に「似てる似てない論争」に興ざめしてしまう。
主役はあくまでも靴を作った関係者であり、
ジョーダンはその象徴。
顔が映らないジョーダンに最初は違和感を覚えたが、
意図を理解した瞬間、この違和感は納得感に変わった。
映画的には良い判断だと思った。
ということで、
これと言ってダメなところはなかった。
物語が始まってすぐに引き込まれていったし、
ドキドキワクワクした。
しかし、突き抜けるほどの熱さがあったわけではない。
なので、今回の僕の評価はこのあたりに落ち着いている。
映画の中で、
「靴はしょせんただの靴。だが、誰が履くかでそこに意味が生まれる」
みたいなことを言っていて、
モノやサービスをつくる背景に、
どんなストーリーと思いを込められるか、
その重要性を考えさせられた。
総じて好きな感じでした。