監督:熊切和嘉

主演:中島裕翔

 

「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔が6年ぶりに映画主演を務め、マンホールに落ちてしまった男の苦闘を描いたシチュエーションスリラー。「ライアーゲーム」「マスカレード・ホテル」シリーズの岡田道尚によるオリジナル脚本で、「私の男」「海炭市叙景」の熊切和嘉監督がメガホンをとった。
勤務先の不動産会社で営業成績ナンバーワンの川村俊介は、社長令嬢との結婚も決まって将来を約束されていた。しかし結婚式の前夜、渋谷で開かれたパーティで酩酊し、帰り道にマンホールの穴に落ちてしまう。深夜、川村は穴の底で目を覚ますが、思うように身動きが取れず、スマホのGPSは誤作動を起こし、警察に助けを求めてもまともに取り合ってもらえない。なんとか連絡が取れた元カノに助けを求めることができたが、自分のいる場所がどこかわからない川村は、「マンホール女」のアカウントをSNS上で立ち上げ、ネット民たちに場所の特定と救出を求めるが……。
中島が主人公・川村役を演じるほか、川村の元カノ役を奈緒、川村の同期社員役を永山絢斗がそれぞれ演じる。(映画.com)

 

2023年製作/99分/PG12/日本
配給:ギャガ

 

「衝撃のラストを意識し過ぎて最後は空振り」

 

この映画はネタバレ厳禁とされているので、

これ以下はまだ映画を見ていない方は閲覧しないでいただければと思います。

(念のため黒塗りにしておきます。)

 

 

Twitterのようなアプリを使って「マンホール女」を名乗り、

自身の脱出を試みた川村だったが、

あることがきっかけでマンホール内で爆発が起こり、

そこに遺体が埋まっていることに気づく。

 

その遺体は、川村本人で、

実は川村と名乗っていた男は全くの別人。

 

主人公の川村だと思われていたのは同級生の吉田という男。

 

吉田は川村本人を殺害し、

その死体を埋めたのが地方の廃校にあるマンホール。

 

吉田は川村の顔そっくりに整形手術を施し、

5年もの間、川村として暮らしていたのだった。

 

事情を知る川村の元カノである女性が何らか薬を飲ませ吉田を拉致し、

このマンホールに閉じ込めた。

 

結局、その元カノによって地上に出れるのだが、

出た瞬間に元カノに顔を切り取られようとしたところ、

吉田が逆襲し、元カノは窮地に。

 

そこへ「正義に乾杯」をうたう謎の少年が助けに来て、

吉田は再びマンホールへ。

 

最後はマンホールのふたを閉じられジ・エンド。

 

 

そんな話。

 

 

で、僕の感想はというと「やりすぎ」。

 

これに尽きる。

 

 

いわゆる設定が覆るみたいなオチなんだけど、

「真実の行方」「ユージュアル・サスペクツ」「SAW」みたいな、

いわゆるどんでん返し系は、

総じて現実的な範囲で戦いに挑んでくる。

 

 

そして、今までのシーンが走馬灯のようによみがえり、

真実は目の前にあったことをラストで観客にぶつけてくる。

 

 

そこに衝撃を受けるわけだ。

 

 

しかし、この作品はどうだろう。

 

そこまでの伏線も薄い中で、

いきなり前提が覆されるものだから、

「えーそうなっちゃうのかー」と後半はかなりがっかりモードで見ていた。

 

 

最後は戦ったりしちゃうし、

謎の暗殺者が出てきて、

そいつも何だかよくわからないし、

「Who done it」どころか「誰だこれ」祭り。

 

 

せっかく途中までいい感じで来たのに、

「もったいないなー」という感覚でいっぱいだった。

 

 

泡が爆発したところから、

別の展開にもっていって、

誰が本当の犯人かという路線で勝負すれば、

結構いい勝負が出来たんじゃないかと思った。

 

 

オリジナル脚本としては、

すごく頑張っていたと思ったので

余計にラストの展開は残念だった。

 

 

中島裕翔は結構頑張っていて、

そこは映画の雰囲気を壊していなかったし、

Twitterみたいなアプリで真相に近づいていく様は、

なかなかスリリングだったので、

とにかく最後にぶっ壊された感じ。

 

 

衝撃のラストに欲を出し過ぎて、

衝撃ではなく辻褄が合わない現実離れをやってしまったものだから、

最後は一気に冷めてしまった。

 

 

ここ最近製作された作品で「衝撃のラスト」とうたわれて、

本当に衝撃だったものを見た記憶がほとんどない。

 

 

最近見た「灼熱の魂」(12年前の作品)は衝撃中の衝撃だったが、

他にはここ1年で言えば「草原の実験」(9年前の作品)くらいだろうか。

 

 

本物の衝撃とは実に静かに、

そして実に現実的な物として目の前に現れる。

 

 

ゆえにこの作品のラストは、

ギャーギャー騒ぐ割には非現実的で、

熱が上がるどころかあっという言う間に冷めてしまったように思えた。