監督:レイナルド・マーカス・グリーン
主演:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン、
ジョン・バーンサル
ウィル・スミスが主演・製作を務め、世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親の実話を基に描いたドラマ。リチャード・ウィリアムズは優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成し、常識破りの計画を実行に移す。ギャングがはびこるカリフォルニア州コンプトンの公営テニスコートで、周囲からの批判や数々の問題に立ち向かいながら奮闘する父のもと、姉妹はその才能を開花させていく。2022年・第94回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、助演女優賞ほか計6部門にノミネートされ、主演男優賞を受賞。ウィル・スミスが3度目のアカデミー賞ノミネートで初のオスカー像を手にした。(映画.com)
2021年製作/144分/G/アメリカ
原題:King Richard
配給:ワーナー・ブラザース映画
「世界一狂った男」
世界最強の選手を育てるには、
世界一既成概念を取っ払わなくてはならないという事を身に染みて感じた作品だった。
78ページに及ぶリチャードのプランの全貌は明かされないのだが、
セリフの中では「全てプラン通りだ」と、
何度も繰り返された。
このリチャードに関わった人達はきっと堪らない気持ちであったただろう。
特にコーチは何度も変わり、
タダ同然で可能性を見出しサポートするものの、
途中で方針の違いからコーチを外されたり、
大金が目の前に迫ったにも関わらず、
そこから何年も待たされたり、
普通ならコーチ側から契約破棄があってもおかしくない。
しかし、物語の最後には1200万ドルの契約を結ぶにいたり、
その後のビーナス、セリーナの前人未到の活躍は、
探せばすぐに検索できるほどのものとなった。
これは長期投資に似ている。
お金に動いてもらいながらも、
少しづつ投資額を上乗せし、
最後に複利で爆発させる。
映画の中では9年間という話があった通り、
長期に渡り練習を積み重ね、
確実に実力をつけながら、
最も高値がついたタイミングで売りに出したわけだ。
この話、実話だというのだから驚きだ。
リチャードはテニスを選んだのだが、
これが他の競技であってもとてつもない才能を開花させていたかもしれない。
この執念は誰にでも出来るものではなく、
だからこそ、ビーナス、セリーナという逸材を育てる事ができたのだと思う。
じゃあ僕もリチャードと同じ生き方をしたいのか?
答えはNOだ。
僕はもっと普通で良い。
おそらくほぼ大多数の人がそうだろうし、
だからこそリチャードは成し遂げた。
しかし、その代償は大きく、
リチャードの人生は本当に豊かなものであったのかは疑問に思う。
ウィル・スミスとアーンジャニュー・エリスの夫婦のやり取りは、
何かドキュメンタリーを見ているような自然さがそこにあった。
さらにウィル・スミスはリチャードの狂人の部分もナチュラルに伝えてくる。
オスカーの演技を堪能した。
映画はビーナスが試合に負けて終わるのだが、
もっと盛り上げてほしかった。
負けたけど、
価値が認められて、
その後、栄光をつかんだ、、、。
みたいな終わり方をするのだが、
正直見ているこちらもビーナスの爆発を見たかったので、
彼女が勝ち切っていく姿を見たかった点が残念だった。
富と名声を手にする一家だが、
ググるとその後の人生は順風満帆というわけでもないということがわかる。
このプランにはチャンピオンになった後の事は書かれていたのだろうか。
ドリームは手にしたかもしれないが、
本当の幸せを手にしたのか。
案外目の前にあった幸せを見過ごしてしまっていたのかもしれない。