監督:井筒和幸

主演:松本利夫、柳ゆり菜、木下ほうか、ラサール石井、升毅、小木茂光、隆大介、外波山文明、三上寛、中村達也

 

「パッチギ!」「ガキ帝国」の井筒和幸監督がやくざ者たちの視点から激動の昭和史を描いた群像劇。敗戦後、貧困と無秩序の中から立ち上がった日本人は高度経済成長を経て、バブル崩壊まで欲望のままに生き抜いてきた。昭和という時代とともに、40年以上続いたその勢いは終わりを告げた。そんな時代の片隅で、何者にも頼らず、飢えや汚辱と格闘し、世間に刃向かい続けて生きてきた男がいた。やがて一家を構えた「無頼の徒」は、社会からはじき出された者たちを束ねて、命懸けで裏社会を生き抜いていく。「EXILE」の松本利夫が主人公を、妻役を「純平、考え直せ」「東京アディオス」の柳ゆり菜が演じるほか、木下ほうか、ラサール石井、升毅、小木茂光、隆大介、外波山文明、三上寛、中村達也らが脇を固める。(映画.com)

 

2020年製作/146分/R15+/日本
配給:チッチオフィルム

 

「ヤクザのホームビデオ」

 

おそらくこれを見ようとしていた方は「アウトレイジ」的なエンタメを期待していたのだと思う。

しかし、蓋を開けてみるとヤクザのホームビデオみたいな作りになっている。

 

 

これが、見た人の評価を下げる最大の理由になっているのではないかと思った。

 

 

かくいう私も全く同じで、

「さーエンタメ見るぞー!」と意気込んで見始めたものの、

一向に物語の全貌が見えず、

「あれ?あれ?」と思っている内に、

次々と仲間や周囲の人間が殺され、

あるものは引退し、最後は主人公の井藤(松本利夫)も引退し1つの時代が終わっていく。

 

 

海を眺めて立ち去る井藤の姿を最後に物語が終わるのだが、

2時間半も尺があったのに、

「何も始まっていないまま終わってしまった」というのが最初の感想で、

とても残念に思った。

 

 

井筒監督は日本版「ゴッドファーザー」を作りたかったんだろうけど、

それと比べると、あまりにもホンワカしているし、

親子の絆みたいな重厚なテーマのようなものは何も感じないし、

本当にヤクザという生き方をしている人たちの日常をなぞっているだけ。

 

 

が、これをホームビデオととらえたらどうだろうか。

そういう視点で見ると十分面白い作品だった。

 

 

とにかく「何故?」という部分がほとんど抜けているので、

妻とのなれそめも、他の組との抗争も、仲間との絆も、全てが表面的。

 

 

バックボーンの設定もあるのだろうけど、

昭和という時代で生きたヤクザを60年分描くので、

どうしても駆け足になり、

断片的な部分を切り取って”昭和のヤクザはの生き方はこんな感じです”

とご紹介する事しか出来なかったと思う。

 

 

あと、僕はこれをNETFLIXで1.5倍速で見たので、

ある程度スピード感を持って見ることが出来たのだが、

エンタメへの期待値が高かった場合は、

2時間半は結構しんどいと思った。

 

 

演技では松本利夫のセリフは字幕が無いと聞き取れなかったので、

字幕付きで見てて正解だった。

 

柳ゆり菜の妖艶で、パワフルな姐さんの雰囲気はよかった。

 

そして、中村達也。

彼だけは本物が混ざっているのかと思った。

演技ではない生まれながらのアナーキーが顔を出していて、

達也のシーンだけは空気がぴりついて感じた。

 

 

 

この映画の宣伝文句や、

映画の紹介文も何とかヤクザ映画のエンタメ性を強調しようとしているのだが、

それがかえって逆効果で、

ドストレートに「これはヤクザのホームビデオです」と謳ってしまった方が、

評価は高かったのではないかと思った。

 

 

 

あれだけ辛口で映画を評価してきた井筒監督。

これを他人の映画だと思って見たら何点つけるのだろうか?

 

 

おそらくボロカスに言っていたに違いない。