© diamond 高畑裕太容疑者のわずか4年で幕を閉じる「俳優人生」

 

 リオ五輪の感動の余韻も、SMAPの解散も、相模原市で起きた施設での大量殺人事件の続報も、高畑裕太という若手俳優が起こした“強姦致傷”事件が全部吹き飛ばした。

 高畑容疑者は、映画『青の帰り道』という作品の撮影で群馬県前橋市を訪れ、スタッフらと一緒にビジネスホテルに宿泊していたのだそうだ。ビジネスホテルというところに予算の少ない邦画の悲哀を感じるが、高畑容疑者が犯行に及んだのはホテルの女性従業員にだった。

 報道によると、二三日午前二時過ぎ、高畑容疑者はフロントに歯ブラシを持ってくるよう伝えた。そして歯ブラシを持参した女性従業員の手首をつかんで無理やり部屋に連れ込み、性的暴行を加えたとのことだ。

 犯行からおよそ一時間後の午前三時三二分、被害女性の知人男性から一一〇番通報があり、その際、“犯人は高畑裕太だ”と名指しで告げられたという。

「女性を見て、欲求を抑えきれなかった」

 取り調べの席で、高畑容疑者は犯行動機をこんなふうに説明したとのことだ。計画性はなかったと言っているが、事件数日前からホテルに宿泊し、夜間は女性従業員がひとりで勤務していたことを高畑容疑者は知っていたと見られている。そのため、歯ブラシを持ってきてほしいとの連絡は、女性従業員を呼び出すための“口実”ではないかと疑われてもいる。

 それにしても、この節操のなさはいったい何なのだろう。

 高畑容疑者の事件がオリンピックの感動物語を押しのけ、SMAPの解散報道を追いやったのには、大きく三つの理由がある。

 ひとつは、事件が、若手とはいえ名の売れた芸能人が引き起こした“性犯罪”だったこと。薬物使用疑惑でもメディアは色めき立つが、性犯罪は異質なのだ。

 二つめの理由が、高畑容疑者の母親が紫綬褒章を受章した大物女優の高畑淳子だったこと。

 そして三つめが、今年三十九回目を迎える日本テレビ『24時間テレビ 愛は地球を救う』の“番組パーソナリティー”に高畑容疑者が抜擢されていて、その放映日が容疑者逮捕の四日後に迫っていたことだ。

 番組では、高畑容疑者も出演のスペシャルドラマ『盲目のヨシノリ先生』を放映する予定だが、すでに撮影・編集を終えたところに事件が起きたため、日本テレビは急きょ『NEWS』の小山慶一郎を代役に立て、高畑容疑者が出演した部分をわずか四日で撮り直すことを決めた。

 また、24時間テレビでは母・淳子とのドキュメンタリーも放映予定だったが、こちらは放送取りやめとなった。愛が地球を救うはずの番組なのに、番組のパーソナリティーが強姦致傷罪を引き起こすという前代未聞の事態が出来したのである。

 さらに、TBSのバラエティー番組『7時にあいましょう』は二九日放映分の収録は終えているが、再編集で高畑容疑者が映っている場面をカットして放送するとのことだ。二五日放映のフジテレビ『となりの新撰組』は番組を差し替えた。

 テレビ東京で放映中の『侠飯~おとこめし~』は高畑容疑者の代役を立てない代わりに出演場面をカットして編集することにしたが、会話などストーリーがつながらない場面のみ撮り直しを行なうことにしたそうだ。

 NHK大河ドラマ『真田丸』では、淳子との“母子共演”が実現し収録も終えていたが、こちらも代役を立てての撮り直しが発表された。

 前橋市を訪れていたのは映画の撮影でだが、撮影中の映画『青の帰り道』は今後の制作継続は未定、さらに今秋公開予定の映画『L‐エル‐』は代役を立てての撮り直しを検討中とのことだ。十一月に上演される舞台『さようならば、いざ』の降板も決まった。

 こうして見ると、高畑容疑者が売り出し中だったのがよくわかる。それだけに各方面に多大な被害と迷惑をかけることにもなるのだが、“人に見られる”ことを生業にする彼は、何故、自分を抑えられなかったのか。

 出演者にギャラが発生する慈善番組なんて偽善だと私は思っているが、それでも三十九回を数える『愛は地球を救う』は日テレの看板番組だ。その番組パーソナリティーに抜擢され、連日のように“番宣”に出演し、本番を四日後に控えた大事なときに、“欲求を抑えきれなかった”との理由で高畑容疑者はホテルの女性従業員に襲いかかった。

 この男は、強姦が罪に問われないとでも思っているほど虚けなのか? この大事な時期に事件を起こすことがどのような事態を招くかも読めないほどの考えなしだったのか。実に愚かで、いま、自分がどのような立場にあるかをわきまえない浅慮短絡ぶりだ。

「どんなことでもするから、この子を産ませてください」

 二十二年前、劇団青年座の無名女優だった母・淳子は、高畑容疑者を身ごもったとき、こう言って劇団を説得したという。このとき、青年座は全国八十ヵ所の舞台公演を予定していたが、妊娠を知った淳子は舞台をキャンセルして裕太容疑者を産んだ。出産の後、淳子は二度目の離婚をするが、授かった息子に向けられた思いは尋常ではなかった。

「裕太だけが真っ当に生きてくれたら、私いま、命あげてもいい」

 残念ながら、真っ当ではなかったようだ。高畑容疑者が反抗期を迎えた中学の三年間、母子はほとんど口をきかず、口を開けば罵声が飛び交うような状況だったとのことだ。高校時代は野球部に所属するが、卒業後の進路に悩んだときに“二世タレントブーム”が訪れ、このブームに乗ろうと芸能界入りを決めたと高畑容疑者は言っている。そして、初めて真剣に母親の舞台を観劇して感動し、十八歳で俳優デビューを飾った。

 淳子は、芸能界入りを決めた息子を自分の仕事場に同行させ、淳子自らスタッフに挨拶まわりをして高畑容疑者を売り込んだのだそうだ。そういった意味では、演技の修業らしい修業をすることもなく、母親の七光りと威光とコネで俳優になったのが高畑容疑者だった。プロになってから演技の勉強を始めるという本末転倒である。

 一部報道では、淳子の“甘やかし”が今回の事件を引き起こしたともあるが、東京未来大学こども心理学部・出口保行教授によれば、窃盗事件や強盗事件を起こした場合は親の甘やかしが原因になるが、性犯罪の場合、事件と親の育て方とは無関係だと言う。

 すると、窃盗事件を起こして日テレを追われたみのもんた次男はみのもんた氏の育て方に問題があったことになるが、強姦致傷罪に問われる高畑容疑者には、懲役七年から八年の実刑判決が科されることになるだろうと専門家は見る。

 注視すべきは、事件が“強姦罪”ではなく“強姦致傷罪”という点だ。

 強姦罪は現行法では被害者の告訴が必要で、その際の量刑は三年以上二〇年以下の懲役刑だが、被害者が和解に応じるなど告訴を取り下げた場合、高畑容疑者は不起訴となる。かつて淫行事件を引き起こした『極楽とんぼ』の山本圭壱のケースがこれだった。

 対して強姦致傷罪は、犯行の際、被害者に怪我を負わせる点が加味され、死刑及び無期懲役を含む五年以上三〇年以下の懲役刑が科せられる。被害女性の負傷の度合いによって高畑容疑者の罪状は“強姦罪”に引き下げられる可能性もあり、おそらくは弁護士も強姦罪の適用さらには示談・和解に持ち込もうとするだろうが、強姦致傷罪の場合、執行猶予がつけられることはまずなく、懲役七~八年の“実刑判決”が妥当との見方が強い。

 芸能人の子どもが起こした事件と言えば、三田佳子次男の三度にわたる覚醒剤使用による逮捕や中村雅俊長男の大麻使用による逮捕、みのもんた次男の窃盗事件、元チェッカーズ武内亨長男の大麻所持による逮捕等が記憶に新しいが、そのたびに親が出てきて謝罪会見を開く。

 もちろん、やってはいけないこととはいえ、覚せい剤の所持使用や大麻や窃盗事件を起こしたわが子に成り代わって親が頭を下げ、CMや番組を降板し、しばしの謹慎をすれば世間も多少は大目に見るだろうし芸能界も復帰を許すが、強姦致傷事件を引き起こしたとなると、世間も芸能界もそう容易く高畑容疑者を許すことはしないだろう。

「うちの裕太クンがとても忙しくしているので、身体が心配です。ちゃんと寝てほしいし、玄関から帰ると三歩くらいでソファに倒れ込んで、死んだように寝て。本当にありがたいです、お仕事いただいてありがたいけど、身体に気をつけて長~くこの仕事を続けてほしいと思っています」

 先月七日のイベントに出席したときの淳子のコメントだ。

 公の場で息子を“クン付け”で呼ぶ淳子にも首を傾げるが、それはさておき、残念ながら高畑容疑者が“長~くこの仕事を続ける”ことはできないだろう。彼女の溺愛する息子は、身勝手な欲望から、蹂躙という卑劣な行為で女性の人生に深い傷跡を残したのだから。

 高畑容疑者は、多くの役者が経験する“下積み”を知らなかった。なりふり構わず母親が営業し、スタッフを口説き回ったから役をもらった高畑裕太は、だから下積み時代の苦労も、仲間が先に売れて行く悔しさも知らないまま、いまに至っているのだろう。経験から滲み出る演技力を持たない俳優に限って、バラエティー番組への露出が増えるのかもしれない。

“女性を見て欲求を抑えられなかった”のではなく、“演じることへの欲求が抑えられなかった”ら、どれほどよかったか。

 この事件が冤罪だったというどんでん返しでもない限り、十八歳でデビューを飾った高畑容疑者の俳優人生は、わずか四年で終幕を迎える。