2008年11月17日、東証1部上場のマンション分譲大手「日本綜合地所」(
「迷惑をおかけしました」
と頭を下げたのは総務部長で、10月の内定式で
「不動産業界は不況だが、うちは大丈夫」
と話していた社長の姿はなかった。学生たちがその理由を尋ねても、確たる説明は得られなかった。
会社側は、学生たちに提示していた1人42万円の「迷惑料」を今回、100万円に増額すると説明したが、学生たちは納得の色を見せず、
「人生を狂わされた」
「1年分の学費にもならない」
と反論を続けたという。
このせいで誰か亡くなったとかとりかえしのつかない障害が生じたとかならとともかく、100万円と謝罪を得られたのだから、かなり幸運である。
「人生を狂わされた」(記事より)と思うのも、今のうちだけだ。若いのだから、これからなんなりと好転のチャンスはあろう。(そのために大学出たんだろ? 高卒以下はもっと厳しいめにあっている)自費で取得中の資格も、他の企業に勤めた際に役立つに違いない。
むしろ、こんなふうにいつまでもゴネたおしていると、それがたちまち他の企業の耳に入り(企業には横のつながりがある)、今後の就職活動に悪影響を及ぼしかねない。
ただ、この会社の社長が姿を現さず謝罪もしなかったのは、どういうことか。社長自体は責任をとっていない、すべて部下に責任をおしつけているということである。せっかく大金を払って誠実さを表したつもりでも、社長のこうした態度により、企業のイメージは一気に蹴落とされたといっても過言ではない。
責任をとろうしないボスだのトップだのが、いかに身勝手冷酷で理不尽、はた迷惑であるか、しかもその被害を被るのが必ず部下であるという現実を、この大学生らは知っているか。疑うなら、このブログ「微生物は見た」の記事を隅々まで読んでみるがいい。こんな企業に就職せずにすんだばかりか、100万円ものお小遣いをもらい逃げできる幸運を喜ぶべきだ。「人生を狂わされた」とは、実はいい方向に狂ったのだ。少なくとも、そう思ったほうが自分自身のためだ。
君らは若いのだ、若いもんは「前向き」って言葉が大好きだろ。こういうときにこそこのお題目をとなえるがいい。そしてつべこべ言ってる間に、とっとと就職活動を続けろ。
・・・・・以下記事本文・・・・・・
日本綜合地所、内定取り消し学生に100万円“迷惑料”
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081210-OYT1T00089.htm
雇用情勢の悪化が深刻化する中、内定の取り消しや派遣切りを巡って、9日、学生や派遣労働者たちが抗議の声をあげた。
先月17日、来春採用予定の大学生53人全員の内定の取り消しを通告した東証1部上場のマンション分譲大手「日本綜合地所」(
広さ8畳ほどの部屋でテーブルを挟んで向き合うと、総務部長は「迷惑をおかけしました」と頭を下げたが、10月の内定式で「不動産業界は不況だが、うちは大丈夫」と話していた社長の姿はない。「なぜ、社長が来て謝罪しないのか」。声を荒らげて詰め寄っても、総務部長は「交渉にあたるのは私たちですから」と理由をはっきり語らなかった。
会社側は、学生たちに提示していた1人42万円の「迷惑料」を今回、100万円に増額すると説明した。それでも「人生を狂わされた」という悔しさは募るばかり。「1年分の学費にもならない」という反論にも、会社側は「できる範囲のことはしている」「生活の面倒までは見ることができない」と語るだけだった。
男子学生は、他に6社からもらった内定を断っており、会社の指示で、自費で宅地建物取引主任者の資格取得の勉強も始めていた。内定取り消しの連絡を受けてから、来春の就職を目指し、インターネットを見て資料請求をしているが、面接までこぎ着けた会社はゼロ。男子学生は交渉後、「本当はこんなことをしている余裕はないけれども、泣き寝入りだけはしたくない」と悲しそうに話した。
(2008年12月10日03時08分 読売新聞)