(前回の続き)
QC活動など現場の従業員による自主活動が、時間外労働として認定された。このような活動は従来、従業員の自主的参加と位置づけられ、一部を除いて残業代を支払われることはなかった。
それが今回の判決で、企業の業績向上を支える「業務」とみなす法的判断が定着する可能性が生じるかもしれない。つまり、
「従業員の自主的参加は、業務外につき時間外手当は支給せず」
といった理屈が通らなくなれば、トヨタ側は、従業員の稼動環境、条件を改革しなくてはならない。
しかし、その活動及び「時間外手当」支給にかかる人件費のおかげで、労務コストの増大は免れない。世界に誇る好業績のブレーキも危惧される。トヨタ側にとっては、もとよりそれが最大の懸念であろう。その懸念封じのために、従業員を時間外手当不払いにしてきたと言われても、しかたがない。
むろん、そんな懸念は企業が負い対処するべきであって、従業員に責任を負わせるものではない。従業員には無報酬で働く義務がなく、企業には無報酬で使う義務がないからだ。
従業員の「自主的活動(実質は業務)」によって人件費を削っている企業は、トヨタに限らない。既に日本中の大、中小製造業に定着している。労働者自身も麻痺していそうな労働条件にライトを当てた判決に影響を受ける企業も多かろう。大企業トヨタが動けば、右へ倣う企業も出てくるに違いない。実際、トヨタの労働者酷使、サビ残を真似導入し、社員を過労に追い込んだ企業は数あるのだ。
かようにして必要性を曝された時間外労働の定義見直しは、けっしてうやむやにしてはならない。
《了》