(前回の続き)


 労働基準監督署の存在意義は、労働者を保護し、その権利を守ることのはずだ。しかるに、日本中にあるこのお役所のほとんどは、毎度おざなりな調査といい加減な処分をする。


 今回の件で、労災給付金不給付を言い渡した静岡労働基準監督署も、その類である。

 件のパワハラ上司は、部下による業務上の相談にさえ応じず、

「お前は会社を食い物にしている。給料泥棒だ」

「存在が目障りだ。お願いだから消えてくれ」

「車のガソリン代がもったいない」

「どこへ飛ばされようと、おれはお前が仕事をしないやつだと言いふらしたる」

などなど、攻撃的かつ下劣な言葉を吐き続けたのだ。実際に発したというこれらの言葉は、誹謗中傷、罵詈雑言、人権侵害、業務妨害、脅迫である。どこをどう採っても悪意むき出しで、指導だの助言だのといえようはずがない。


 にもかかわらず、同労働基準監督署は、これらの暴虐な人権侵害、虐待を

「上司の発言は助言、指導」

で片付けた。故人の遺書に経緯が述べられ、その苦悩した姿が明確だというのに黙殺し、会社側(その悪辣上司を含む)の言い分だけに従ったのだ。

 労働基準監督署が、厚顔無恥な人権侵害を正当化(助言、指導だと!)する態度だからこそ、こうした外道上司がのさばることになる。おかげで、パワハラで苦しめられる労働者が後を絶たない。


 日本では特に、パワハラ規制がたち遅れている。世界に進出した企業がいかに多かろうとも、労働環境の改善さえままならない企業は、世界的に「三流」と見なされる。ひいては、日本という国そのものが「三流」の烙印を捺されるのだ。


 亡くなった男性の妻は、会社「日研化学」(現・興和創薬)とパワハラ上司に対し、約1億円の支払いを求める訴訟を起していたが、2006年9月に和解が成立している。



                   《了》