過労が原因の自殺(未遂含む)で2006年度に労災認定された人は、過去最多の66人と出た。2007516日、厚生労働省のまとめで分かった。鬱病など精神疾患が認定された人数も205人に上り、過去最多となった。

 労働環境や条件の見直しが叫ばれる中、一向に改善がなされていないという現状が、浮かび上がっている。実際、改善策推進の指示を出し、実行できる立場にいるのは、企業の上に立つ者だ。そうした者が親身でなければ、労働者の立場や権利が守られるわけがない。


 厚生労働省によると、過労自殺が認定された66人のうち、

50代 21

30代 19

40代 12

 鬱病など精神疾患の認定を受けた205人の内訳は、

30代 83

20代 38

40代 36

50代 33

となっている。むろん認定だけでなく、労災申請数の819人も過去最多である。


 さて、このデータでは50代の認定数が少ないが、実際にそうだとは言い切れない。50代には、精神疾患に関する知識や認識の薄い人が多い。おしなべてそういう人は、心身に負担がかかっても、

「ちょっとした疲れ」「気のせいだ」

などと自身で納得し、医師など専門家に相談することもしない。したがって、若者層よりも壊滅に突入しやすい。また、何かの都合で認定が下りていないというだけで、実際には明らかに労災であることは、大いにありえる。


 過労で脳出血や心筋梗塞などを発症した「脳、心疾患」の認定者355人(うち死亡147人)も過去最多で、内訳は次のとおりである。

50代 141

40代 104
30
代  64

 脳、心疾患は、普通に生活していても年齢とともに罹患率が高まるものだ。これに精神的、肉体的負荷が重なれば、ひとたまりもない。

「若年労働者から、鬱病など心の問題の相談が増えている。今回の結果には、それが反映されている。長時間労働やリストラなどで雇用不安のストレスが高まっている。長時間労働の削減や安定雇用対策に取り組まない限り、過労労災を減らすことはできない」

とは、労働相談などを実施している日本労働弁護団の事務局次長、棗(なつめ)一郎弁護士の談である。


 確かに、精神疾患で病院などの専門機関を訪れる若者は、昨今大幅に増加している。心療内科やメンタルクリニックといった病院には、2030代と思われる患者でいっぱいだ。だからといって、若者だけが患っているということにはならない。

 苦悩を表に出し、苦痛に際して堂々と悲鳴をあげられるのは、若者なればこそだ。若者にとって簡単なことが、中高年にはためらわれることがある。みだりに自分の弱さをさらけ出すことを、自尊心が邪魔するのだ。他人に弱みを見せるとどんなめにあわされるか、無意識にそれを算段するのは、これまでの人生で辛酸をなめてきた世代なればこそである。


 ただでさえ、戦後の精神論(忍耐、自己犠牲は美徳)という教育を受けた世代だ。加えて若い頃は、好景気時代を過ごした。頑張れば頑張るほど見返りが期待できた時代、勤勉に働いたという自負もある。この世代は、めったなことでは自分の衰弱を認めようとしない。

 躊躇なく悲鳴をあげ、危険信号を発して周囲の助けを求める若者より、このような世代のほうが、本来よほど危険であり注意しなければならないのだ。この年代に対する特別な配慮はむろん、労働条件、環境の改善を急ぐことは言うまでもない。