大阪府東大阪市の会社で勤務していた50歳の男性が、くも膜下出血を起こした。陳列用棚製造会社の営業部長だったこの男性は、1998年5月、勤務中に頭痛などを訴えるようになり、翌月に死亡した。タイムカードの記録から「過労が原因」と判断した妻は、遺族補償給付などを求めて労災申請を行った。

 しかし東大阪労基署は、社長の親族である社員への聞き取りなどを行い、

「記録上、長時間労働になっているのは飲酒や雑談が原因。業務とは関係ない」

と不支給を決定した。大阪労働者災害補償保険審査官も審査請求を棄却した。

 これによって、労基署というものがいかに能無しで杜撰であるかがわかる。そうでなければ、労災保険を出したくないばかりに、わざと労災認定になりえないよう仕組んだに違いない。

 東大阪労基署の役人は、件の会社まで調査にやって来て、わざわざ「社長の親族である社員」に

聞き取りをしたのだ。まともな社会人ならば、それがどういう結果を招くかぐらいわかるはずだ。さらには、労基署側の意図をも疑わしくなる。


 案の定、この聞き取り調査によって、

「記録上、長時間労働になっているのは飲酒や雑談が原因。業務とは関係ない」

との「証言」が取られ、不支給決定となった。義理にしろ身内贔屓にしろ、普通に考えて「社長の親族である社員」が、社長に不利なことを正直に言うはずがないのだ。

 労基署にとっても、労災認定をしなければ、保険金支払いという「無駄な」出費を抑えることができる。労災保険は、万が一のために企業が掛けてきたお金である。それでも、いったん国に納められたものは、できるだけ戻したくない、払いたくないというわけだ。なるほど、それで数ある一般社員ではなく、他ならぬ「社長の親族である社員」に質問し、めでたく都合の良い「証言」を得られたというわけだ。


 数歩ばかり譲って、そんな魂胆はなかったとしても、「社長の親族である社員」の証言のみを採用したじたいが、杜撰以外の何ものでもない。公正な立場とは言えない者から、聞き取り調査をしたのだ。

(続く)