多くの過労死裁判は、有働時間の長さが元凶になっているが、この裁判では労働の質が問われた。このような状況で損害賠償を命じた判決は、非常に珍しい。
原告側についた高崎暢弁護士は、
「リストラに絡む研修に参加させたことを会社の過失と認定しており、NTTグループの配転をめぐる各地の訴訟にも大きな影響がある」
と、勝訴した意義を大きく評価した。
確かに、このような前例を作っておけば、今後の訴訟、判決にも影響が及ぶ。都合が悪くなると、
「前例がない」
の一言でごまかす外道企業や能無し裁判官には、有効な手であろう。
同弁護士が触れたとおり、NTTグループのリストラを巡っては、配転の無効や損害賠償を求め、東京、大阪、札幌など全国6地裁で50人が訴訟を起こしている。
NTT東日本は、
「当社の主張が認められなかったのは、遺憾に思う。控訴するかどうかは、判決内容を精査して検討したい」
としている。
さて、会社に対しての訴訟はいったん勝訴となったが、遺族側にはもう一つの山があった。
旭川労働基準監督署に申請していた、労働者災害補償保険(労災保険)給付が、04年7月に棄却されていたのだ。労災保険審査官への不服申し立ても11月に退けられ、遺族は、労働保険審査会に再審査請求している。
労働基準監督署だの労災保険審査官だのは、いったいどういう調査をしているのか。会社側は明らかに安全配慮義務違反行為(会社の健康管理指示書を無視し宿泊出張を強要)をしているというのに、労災認定が降りない理由はなんなのだ。調査のやり方がよほど杜撰なのか、会社の隠蔽工作が巧みなのか、あるいは袖の下やら媚薬やらの効果なのかと、疑いたくなる。
なにより国とて、民間の保険会社と同じだ。できるだけ保険金を支払いたくないのだろう。