2002年6月、NTT東日本の社員だった北海道旭川市の男性(当時58歳)が、急性心不全で死亡した。

 この男性(奥村喜勝さん)は、02年1月、リストラ計画に基づく子会社転籍を打診されていた。奥村さんが断ると、会社側は、職種変更に伴う宿泊研修を同年4月下旬から2か月以上受けるよう命じた。その研修中、休日の6月9日、空知管内新十津川町で倒れ、死亡した。

 遺族である妻と長男は、

「(奥村喜勝さんには)心筋梗塞の既往症があり、大規模かつ違法なリストラや配置転換のための研修などで心身に過大な負担がかかった」

と主張し、03年2月、NTT東日本に総額約7,200万円の損害賠償を求めた訴訟を起こした。

 これに対し同社は、

「健康は十分に配慮した。死亡は予見できなかった」

「死因と研修に因果関係はなく、安全配慮義務違反もない」

と反論し争っていた。


 喜勝さんの心筋梗塞の既往症について、会社の健康管理指示書には、こう記されている。

「心臓病の持病のため会社の健康管理指示書で原則として残業や宿泊出張は不可」

 にもかかわらず、被告側の言い分はあまりにも矛盾している。「残業や宿泊出張は不可」と明記されているのに、2ヶ月以上の宿泊研修を強要したのだ。それも、リストラ計画に基づく子会社転籍を断ったという理由でだ。つまり、嫌がらせである。

 そうした事実がありながら、よくもこんな厚かましい主張ができたものだ。恥知らずとしか言いようがない。日本にその名を轟かせる、あのNTTともあろう大企業がである。


 札幌地裁の奥田正昭裁判長は、喜勝さんが「心臓病の持病のため会社の健康管理指示書で原則として残業や宿泊出張は不可」とされていたことを示し、

「宿泊研修と死因に因果関係がある。会社は男性の持病を認識しており、安全配慮義務に違反していた」

として、同社に総額約6,600万円の賠償を命じた。

(続く)