(前回の続き)
判決理由について、不当な点を挙げてきたが、この裁判がかなり偏った見解で進められたことも、見逃してはならない。
1. 主治医の法廷証言を採用せず、カルテも無視。
2. 精神的疾患の調査は労働者のプライバシー侵害となる。
主治医の証言とカルテ提示があったので、小出堯氏が鬱病に罹患していたことを、裁判長は認めたはずだ。にもかかわらず、それらを「無視」するには結局、
「本人が鬱病であっても会社はそれを知らない、だから罪はない」
に持ってゆくためだった。いわば、予め用意された結論のために作られた理由としか思えない。
そうでなければ、2のような不自然極まりない理屈が出てくるだろうか。どう考えても、
「鬱病であることを認めたくないが、主治医の証言もカルテもある。しゃーない、もっともらしい理由理屈をつけて、これらを無視してやれ」
という被告側の「都合」が明白だ。2の判決理由は、医師が証言する意味を頭から否定している。プライバシー侵害という言葉を使えば、当節なんでもまかり通せると思っているらしい。
以上の見解が自分の誤解であったとしても、この裁判が終始理不尽な点に満ちているのは、事実である。この裁判には、労働者の「健康で文化的な生活」を支援、保障する姿勢がまったく見られない。遺族側の無念を思うまでもなく、明らかに不当な裁判である。汚い裏事情を勘ぐられてもしかたがないだろう。
なお、今回の判決について、現被告「ソフトバンクモバイル」(吸収合併後、この件を引き継いでいる)は、
「当社の主張が認められ妥当な判決と認識している」
とのコメントを寄せている。
吸収合併前(ジェイフォン)で起きた事件であるから、ソフトバンクモバイルに責任はないだろうとの意見もあるが、とんでもない。このようなコメントを述べることにより、既に同類同罪を証明している。類友で合併したということがよくわかった。かくなる上は仲よく謝罪し、しかるべき責任をとるべきである。
・・・・・・・以下記事貼付・・・・・・・
http://www.kinyobi.co.jp/KTools/antena_pt?v=vol640
「ボーダフォン」社員の過労自殺に対し不当判決
携帯電話会社「ジェイフォン(当時)」(注)の小出堯さん(当時56歳)が2002年に自殺したのは、うつ病であったにもかかわらず強制配転するなどの安全配慮義務違反があったとして、遺族が会社を相手取って約1億650万円の損害賠償を求めた裁判で名古屋地裁(永野圧彦裁判長)は1月24日、原告の訴えを棄却する判決を下した。
不当な判決に、遺族側の支援者で埋まった大法廷は静まり、ため息とともに「納得できない」との怒号も飛んだ。
堯さんは1994年、音響機器メーカー「ケンウッド」から「東海デジタルホン」(ボーダフォンの前身会社のひとつ)に出向したが、開局までの時間的余裕もなく連日深夜まで長時間労働に従事し、出向の翌年にうつ病を発症した。さらに02年には、片道2時間もかかる保守センターに強制配転された。経験のない仕事をひとりで任されることになり、堯さんは何度も上司に配転の不安を訴えたが、聞き入れられなかった。その後、自殺未遂するなどうつ病が増悪した。自殺したのは配転から7日目のことだった。(本誌06年6月2日号参照)
判決は、配転命令が大きなストレスとなったとして自殺との因果関係を認めたが、会社は堯さんの自殺を予見できなかったとした。これは、会社側が「うつであることを知らなかった」と押し通せば、安全配慮義務などの責任が問われないことを意味し、不当な判決といえる。妻の典子さんは「控訴してがんばりたい」と決意を語った。
訴訟が継承されている現在の被告「ソフトバンクモバイル」では「当社の主張が認められ妥当な判決と認識している」(広報)としている。
(注)ジェイフォンが英国ボーダフォン傘下に入ったのは01年。社名をボーダフォンに変更したのは03年である。現在はソフトバンクモバイル。
(平舘英明・ジャーナリスト)