労災申請の手続きには、おおかた次のようなものがある。


1. 所轄の労働基準監督署で書類を受取る。

2. 必要事項を記入して会社と医師の判をもらい、同署に提出する。

3. 戸籍謄本など指定の必要書類を添える。

 会社が証明するのは、労働保険番号や給与の額であるから、これじたいは会社にとって不快なものではないはずだ。しかし、この段階で「労災申請するぞ」と宣告したことになるのだから、会社側としてはやはり穏やかであろうはずがない。

「ワガシャで労災が起きたなぞと世間に広まれば、不名誉この上ない」

とばかりに、必死こきまくって証拠物件を隠蔽、あるいは捏造しまくるであろう。ただでさえ役立たずの役所が重い腰を上げて、「よっこらしょ」と調査にやってくる前に。

 あまつさえ、必要書類の提供を拒否したり、被災労働者やその家族に対して嫌がらせをしたりという会社も珍しくない。


 まして、普段から労働保険料を支払っていない会社ならば、なおのことである。保険未加入がバレるのも不名誉、労災が起きたことが世間に知れるのも不名誉だ。しかも認定が下りれば、被災者に給付される金額の100%を会社が負担しなければならない。(平成17年11月より施行)これまで保険料を真面目に払っておらず急に全額支払うのだから、とてつもない支出額になる。

 会社側の慌てぶりは容易に想像できよう。もともと保険金を踏み倒すような会社だ、いかなる手段をもってしても、事実隠蔽工作を工夫するに違いない。まして、調査に入る役人(労働基準監督署の人間)のやることは、まったくもって本当に「お役所仕事」である。「ごっこ」と呼びたくなるほどのシロモノでさえある。

 事業主、他の労働者にそれぞれ事情聴取し、必要な書類を提出させる。ところが、会社側にとって都合の悪い物件は隠蔽されている。事情を尋ねられた(たいていは、社長や幹部などのいる前で)他の労働者は、お互いに牽制しあい、また自分の立場を危ぶんで、無難なことしか言えない。


 役人などは、そうしたところを洞察する気働きもなく、あるいはそれを察知していても追求する気構えもない。マニュアルどおりのことをしていれば、自分の給料は安泰なのだ。とっとと引き上げ、さっさと書類を作成して、すんなり片づけてしまう。事実なんかどうであろうが、彼らの知ったことではないのだ。

 さらに勘ぐれば、民間の保険会社同様、保険金の「出し渋り」もあるのかもしれない。

 上記のような状況も手伝って、労災認定が下りるのは非常に稀である。申請者の約1割だという。おまけに、結果はすぐに出ない。何年も経ってから、「不給付」とそっけなく宣告される。マスコミで採りあげられるそれらの件を見て諦めるという人も、多いに違いない。つまり、被災者及びその家族は、泣き寝入りを余儀なくされるわけだ。

 どこまでも労働者をないがしろにする現代日本は、体制を組んで農民を酷使虐待し続けた江戸時代と、根本は変わっていない。