グロテスク/桐野 夏生
¥2,000
Amazon.co.jp

この本は、ダイエットや摂食障害関連の本だからという理由で手にしたわけでなく、たまたま母が、本の整理をしていて、「ブックオフに、まとめて引き取りに来てもらうの。読みたいのがあったらよけておいて。」
というので、なんとなしに読むことにした。
母が娘に貸すにはちょっと過激でエロイ(エグイ)ストーリーなのだが、読み進んでいくうちに、私たちが今、悩まされがちな、自分の価値感で生きて行くことの難しさを、主人公を含む4人の高校生が、それぞれの武器(世界)で誰にも負けないように必死に生き抜く、熟女になるまでのなんともグロテスクなお話。
アマゾンのレビューから抜粋させていただくと、
桐野氏はこの世の差別のすべてを書いてやろうと思ったのだそうです。「差別」とは他者に対する優越感、他者への容赦ない哄笑、仲間意識、色々な複雑な感情が込められています。日本には階級差別はタテマエ上ないことになっていますが、周知のごとく学校や職場でのイジメを含め、階級や派閥、そして差別のない集団など皆無でしょう。絶対に越えられない壁の存在、そういう差別社会の中での厳しいサバイバルと「解放」が嫌と言うほどに描かれています。特に女性がサバイバルするということはどれくらいに過酷なことなのか。

勝つとか人より優れるとかいうこと。その底には、自分が自分であることを確認するという作業が潜みます。しかし他者の目を通してしか「自分であること」を確認できない現代の生。そこに潜む圧倒的な孤独みたいなものが透けて見えて、その暗さと深さには背筋が寒くなるほどです。狂おしい程に求めそして堕ち続けた彼女達、あるいは闘争から引くというサバイバル戦術を取った彼女=「わたし」。誰もが最後には、自分の存在を確認するために自らを滅ぼしてゆきます。

迸る悪意。他者と自分の、理想と現実の乖離。都合の良いように嘘に塗り固められた過去。救いようのない物語・・・。読んでいて吐き気を催すほどで、その生き様はまさに「グロテスク」。

読んでいくうちに驚いたのが、冒頭にも述べた通り、摂食障害とは無関係だと思って手に取った本だが、その4人の少女の中の一人が、拒食症なのである。
拒食症がテーマの物語ではないため、特に摂食障害に関しては趣きを置いていないが、当の本人は、自分が拒食症という認識はまったくない様子で、
とにかく痩せている自分の体は美しい。。。と繰り返す。
その痩せがどんどんエスカレートして、周りは、化け物扱いしていることにも気づかない。
肉付きのよい女性こそが醜い、と卑下する。

ポーランド系スイス人の父と、日本人の母を持つハーフの姉妹。
主人公の姉の外見は、日本人の母に似て、決して美人とはいい難い(物語の中では不細工、とされている。)
それに反して、妹は、西洋人の父の血を強く引き、人間離れした、お人形のような美しさで、人々を魅了する。(若いうちは・・・。)
外見は、年齢を重ねるごとに見事に崩れ、中身のない妹(ユリコ)は、堕落していく。
東洋人は特に、歳を取ると一気に太る傾向にあるもんね。

面白いのは、その美しさゆえに、不細工で幼い頃から姉に恨まれていた妹も、
本当は、母に似ている姉が羨ましくて仕方がなかった。

「私には、美しい外見などどうでもよかった。
それより、姉のように母に似ていて、血の繋がっていることを目で確認出来るほうが重要だった。」

とある。

人の心はわからない。

人も羨む美貌の持ち主の苦悩。

思いがけず、出会ったこの本に、くだらない差別と、自分の存在を確認するための女性のサバイバルというものを突き付けられました。