ナナミの事を解っていない。確かにそうだ。
「そうかもしれませんね」
「そんな顔しないで、ユリちゃんが心配するわよ」
ユリちゃんが、犬を連れて戻ってきた。
「ユリちゃん、行こう」
「今日は、お兄ちゃんと一緒だね」ニコニコして僕を見ている。
「ちょと待って」おばさんは、ユリちゃんの着替えを用意してくれた。
「明日の朝、連れてきますので宜しくお願いします」
「ジョンスさん、無理はしないで」
「はい。失礼します」
「おばちゃん、バイバイ」
ユリちゃんを車に乗せ、ホテルに向かった。
「ユリちゃん、明日またおばさんの家で良い子にしていて。夕方に迎えに行くからね」
「は~い」
「良い返事だね」
この子といる事で、少し心が癒される。
ホテルに着くと、ユリちゃんは部屋の中を駆けずりまわっている。
「ユリちゃん、お話があるからこっちに来て座って」
「何?お兄ちゃん」
「明後日、お姉ちゃんを迎えに日本に行くよ」
「本当?」
「本当だよ。少し長く飛行機に乗るから、良い子にしてて。それと、日本はユリちゃんの
話している言葉が通じない。迷子になったら、韓国に戻れなくなる。
お兄ちゃんの手を離さない事。」
「は~い。お姉ちゃん迎えに行こう。そうだ、ユリ絵を描いて渡そう。お兄ちゃん、ノートと
クレヨン貸して」
ナナミの置いて行った、スケッチブックの束から、ユリちゃん専用と書かれたスケッチブックと
クレヨンを渡した。
絵を描いている間に、リュさんに電話をした。
「リュさん、お疲れ様でした」
「ジョンスは、大丈夫ですか?」
「僕は、大丈夫です。ミニ、ナナミに癒されてます」
「ユリちゃんですか?」
「そうです。本題に入りましょう。母親はどうでしたか?」
「いは、話をしました。除籍をする事には、応じました。ただ、ジョンスの養女になると
言ったら、金銭を要求してきました。今までの事を考えたら、出来ないはずですが、
普通の考えを持っていませんでした。クォン弁護士が、法的に処理すると言いまして、
裁判に敗訴すれば、お母さんが裁判の費用を負担しなくてはいけなくなると言ったら、
渋々除籍の書類に、署名捺印をしました。
また、念書にも、署名捺印をしました。クォン弁護士が念書に2項目追加したので
今後、ユリちゃんの前に姿を現す事は無いでしょう。その足で役所に行き、
手続きをしました。ユリちゃんの養女申請も行いました」
「ありがとう。リュさん、もう一つお願いがあります」
「何でしょうか?」
「明後日、日本に行くチケットをもう1枚追加してほしいのです」
「誰が行かれるのですか?」
「ユリちゃんです。パスポートがあります。番号と生年月日を言いますので
お願いします」
「解りました」
ユリちゃんのパスポート番号と、生年月日を伝えた。
「羽田着の午前便をお願いします。2泊しますので、手配をお願いします」
「では、ホテルも手配します。明日は、事務所に来られますか?」
「ユリちゃんをジェイの実家に預けてから行きます」
「ジョンス、きちんと寝て下さい。食事もして下さい」
「解りました。リュさんも今日は、帰ってゆっくりして下さい」
電話を切り、ユリちゃんの傍に座りユリちゃんの描いている絵を覗き込んだ。
僕が歌を歌い、ナナミとユリちゃんが、笑って見ている絵・・・覚えたばかりの
ハングルで「オンニ」へと書いている。
ナナミは、この絵を受けっとくれるだろうか?