中国舟山国際水産城-1
現在、上海長興島横沙漁港まちづくりコンペの仕事をしています。計画敷地は現在人っ子一人住まない埋立地で、広さが16万㎡あります。全く何もないところに漁港と漁業の町をつくる計画です。
その計画敷地は、上海市内の揚子江の河口にある長興島の川下側(つまり海側)にあります。長興島は、揚子江の流れに沿ったちょうど飛行機の流線形をした翼の断面の形をしています。揚子江は、この流線形をした島の切っ先で二つに分かれ、川下側の切っ先で再び一つの川になります。長興島の両側の二つの川幅は、ともに8kmを越えます。現地に立つととても川には見えません。長興島と上海市の本土とは川下を通る地下高速道路でつながっています。将来、計画地近くまで地下鉄も開通し、地下鉄の駅もできる予定です。
今回漁港をつくる長興島の川下側には、長興島の大きさに比べて、赤ん坊ぐらいの大きさの横沙島があります。横沙島が今回新しくつくる漁港にとっては、自然の防波堤の役目をします。ちょうど三浦三崎港の太平洋側に城ケ島があって、城ケ島が三崎港の自然の防波堤の役割をしているのと似ています。
今回の設計の参考とするため、先月の9月24日から10月1日まで、このコンペの事業提案者の一社である深圳の農産品の会社の人達と、漁港巡りをして来ました。上海から深圳までの、だんだん南に下がりながらの陸路での旅でした。ちょうど成田を発つ日に、フジタの社員が拘束され、また、尖閣諸島の中国漁船衝突事件で日中間の雲行きが怪しい最中で、訪問先がそれもその火中の栗を拾いに行くような漁港巡りの旅でした。旅の間中ずっと心の中に不安を抱えた旅でした。
また、この仕事の参考とするため、日本の漁港巡りもしました。東京近郊の三大漁港、焼津港、三崎港、銚子港等の漁港巡りです。
この二つの漁港巡りで、中国と日本における漁港の構造、荷役方式、流通システムの違い、またそのシステムの根幹をなす魚に対する食文化の違いをまざまざと認識させられました。
中国の旅では、道中各地で中国が日本を圧倒する国力と技術を付けているのを目の当たりにしてきました。しかし、まだまだ中国の遅れているところも認識し、そして、近年元気がなく中国に圧倒されそうな日本でも、充分中国より優れていて、日本が負けないところを確認できた旅でもありました。
ここしばらくこのブログで、今回の旅で得た中国の漁港と日本の漁港の違いについて紹介していきたいと思います。
最初は、何回か前のブログで紹介した普陀山があった街、「舟山」の漁港の紹介したいと思います。舟山漁港は、中国の3大漁港の一つだそうです。
■ 舟山漁港-1
上掲の写真は、舟山漁港のメインの入口を漁港の浮桟橋から見た光景です。
漁港の入口に「中国舟山国際水産城」の看板が架かっているのが見えます。
桟橋の両側に見えているのが漁港内の海面です。泥水の色をしています。
私達が携わっている今回のプロジェクトの漁港周辺の水の色も同じ色です。
上海空港に向かって飛行機が降下する時に見た上海沖の海面の色も、こんな
泥水色をしていました。こんな海の色で果たして美味しい魚が獲れるのだろうかと
いうのが、この水の色を見た時の第一印象です。
上掲の写真で桟橋上を、リヤカーを自転車で引いている人がに写っていますが、
この漁港で水揚げされた魚の、水揚埠頭から陸までの運搬は、日本のリヤカーに
似た手押し車で行う人力によるものがほとんどでした。
中国の荷役のほとんどが人力に頼るシステムになっているのは、人件費が安い
ことが原因の一つだと思いますが、桟橋そのもの幅が狭く、日本の漁港の水揚
作業で多用されている大型トラックや、クレーン車、フォークリフト等が漁船近くまで
至れない構造になっていることもその原因の一つになっています。
■ 舟山漁港-2
この写真は、前のカットを別の角度、舟山漁港の桟橋から撮ったものです。
右手に見える桟橋が鉄骨のブリッジになっていますが、舟山漁港の埠頭が潮の
満ち引きで埠頭が浮き沈みする浮桟橋になっている証です。
入口のアーケード看板に書いてある「中国舟山国際水産城」の「城」は、
”CITY”という意味です。この街が漁港と水産品を取り扱う街であることを示して
います。今回計画している上海長興島プロジェクトもこういった街をつくる予定
です。
この「城」という言葉は、中国ではショッピングセンター等の大規模商業施設や
大規模開発でつくられる街の名称によく使われています。
■ 舟山漁港-3
舟山市全体が大きな島になっていて、本土とはブリッジでつながっています。
この写真左にブリッジが写っていますが、本土とつながっているものか、舟山市
の別の島とをつなぐものかはよくわかりません。
■ 舟山漁港-4
舟山漁港は、漁船が着岸する埠頭が、水位の上昇下降に応じて常に同じ高さ
になる浮桟橋になっています。上掲の写真で水平に写っている漁船が着岸して
いる埠頭は、浮桟橋になっています。その埠頭から直角に付き手前に向かって
伸びている錆びた鉄骨でコンクリート基礎に固定されています。その基礎上の
鉄骨の支点を回転軸として、浮桟橋が潮の満ち引きに応じて上下できるように
なっています。
今回私達が参加する上海長興島プロジェクトの新しい漁港の埠頭は、既に
建設工事に入っていますが、この舟山漁港の埠頭形式と同じ浮桟橋になって
います。この形式の埠頭を前提として、今回プロジェクトの魚の水揚方式に
ついて効率的な方式を提案しなければなりません。
日本の漁港の埠頭形式は、この形式が非常に少なく、一般的に採用されて
いる形式は、強固な地盤でできている岸壁形式です。
この日本と異なる埠頭形式の違いで、中国の魚の水揚作業は、人海戦術に
頼らざるを得ない、非効率なものになっています。
日本のそれは、埠頭が動かない頑丈な作りになっているおかげで、水揚作業
を行う埠頭にクレーン車や大型保冷車が直接船の近くまで行くことができ、
機械力を使い人力を最小限に限定した荷役作業でおこなうことができるように
なっています。



