セミ・ディタッチド・ハウスの土地利用パターン | エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸

セミ・ディタッチド・ハウスの土地利用パターン

ロンドン特有の集合住宅「エステート(ESTATE) 」の開発手法は、道路整備、宅地開発並びに住宅の建設、販売まで一手に同一のディベロッパー(建設業者兼不動産業者)によって住宅開発を行なう手法です。その手法によるハウジング・プロジェクトの一つに、セミ・ディタッチド・ハウス(SEMI-DETACHED HOUSE)の住宅開発があります。


ロンドンの住宅開発は、ロンドンの急激な人口増に呼応し行われたものであり、 

 当然のこととして投機目的で行なわれましたので、できるだけ大量の住宅を効率

 よく供給し、できるだけ多くの利益を出すことができる土地利用パターンが考案さ  

 れました。


それは、開発する敷地の中の道路の占める面積をできるだけ少なくし、その道路にできるだけ多くの宅地を張り付けることを工夫したものです。具体的には、開発するすべての宅地の形状を短冊状とし、一本の前面道路STREET)に接する各短冊状敷地の短辺の接道長をできる限り短くし、できる限り多くの宅地が確保できるように考案されたものです。ほぼ同じ形状の短冊状宅地に、同じ間取り、同じ外観デザインの住宅を、同じ住宅配置で建設することにより、効率的かつ安価に住宅を建設でき、多くの利益を生むことができました。

日本人にとって戸建て住宅に住むことがあこがれの的ですが、ロンドンの人々にとってもディタッチド・ハウス(DETACHED HOUSE)に住むことはあこがれの的です。ロンドンの住宅開発は、ディタッチド・ハウスの住宅開発から始まり、それがロンドンの住宅開発の理想形でした。


ディタッチド・ハウスの宅地内の土地利用の典型的パターンは、短冊状宅地のストリート側の住宅の前面に、お客を出迎えるパブリック的な空間となる小さなフロント・ガーデン(FRONT GARDEN)をとり、ストリートと反対側の住宅の裏面に、プライベートな屋外生活空間となるバック・ガーデン(BACK GARDEN)を設けます。


 ディタッチド・ハウスは戸建て住宅ですから、住宅建物の周辺にぐるりと空隙を設 

 けなければなりません。短冊状宅地にたつディタッチド・ハウスは必ず2辺の隣地 

 境界線をもちますが、その隣地境界線に接して、隣地境界線と住宅建物との間に

 フロント・ガーデンからバックガーデンに通りぬけられる細長い空隙を2か所もちま  

 す。ところが、セミ・ディタッチド・ハウスは、1辺は隣地境界線の上に戸境壁がある

 ため、この空隙が1か所しかありません。その分だけ、セミ・ディタッチド・ハウスの

 宅地はディタッチド・ハウスのそれより、短冊状宅地の形状をさらに細くできます。そ  

 のため、開発する宅地の数を増やすことができます。(下図のSEMI DETATCHED

 HOUSE SITE PLAN 参照)


セミ・ディタッチド・ハウスは、2住戸1棟で、ロンドン市民が理想とするディタッチド・ハウスではありませんが、庭付きの住宅であり、住宅規模が小さくても2住戸1棟でイギリス人が好きなシンメトリー外観にすることができ、一見ゴージャスな住宅のように見せかけることができ、それでいてディタッチド・ハウスより安く購入できますます。こうした利点もあって、それ程収入の多くないサラリーマンがロンドンの郊外の住宅を購入し始めた1900年代初頭のエドワード朝以降の住宅開発の多くは、このセミ・ディタッチド・ハウスの開発が主となりました。


下の写真(PHOTO-1~2)は、ロンドンの住宅公社が開発したセミ・ディタッチド・ハウス(SEMI-DETACHED HOUSE)のハウジング・プロジェクトの現場写真です。

1994年にローコスト・ハウジング公団の調査団の一員としてロンドン郊外の住宅開発サイトを訪問した時撮影したものです。この写真が示すように、現代でもまさに、17世紀後半にスタートしたディベロッパーによる住宅開発と同じ土地利用パターンで、同じ間取り、同じ外観デザインのセミ・ディタッチド・ハウスが何十軒も並んで建設されていました。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス2

■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-1

  

  上の写真は、公団調査団の一員として見学したセミ・ディタッチド・ハウスの

  ハウジング・プロジェクト・サイトの写真です。このサイトには、2階建ての全く

  同じ形、同じデザインのセミ・ディタッチド・ハウスが並んでいました。




エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス1

■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-2

   

   上の写真は、2住戸で1棟のセミ・ディタッチド・ハウスのストリート側、フロント・

  ガーデン側のファサードの写真です。セミ・ディタッチド・ハウスの典型的な左右

  シンメトリーのファサードになっいます。住戸プランもファサードの横幅の中心線

  部分に2住戸の戸境壁があり、戸境壁の中心線をミラー面として、左側の住戸と

  右側の住戸が左右裏返しの同じプランでできています。

   セミ・ディタッチド・ハウスのフロント・サイドには、タウンハウスの特徴である猫の

  額のような小さなフロント・ガーデンが付いています。フロント・ガーデンもファサー

  ドの中央戸境部分に煉瓦塀が設けられているのが見えます。

   デザインはモダン・スタイルですが、外装材料は、屋根が瓦葺き、2階外壁が

  ホワイト・スタッコ塗り、1階外壁は煉瓦積みででき、ジョージアンやヴィクトリアン

  の伝統様式のタウンハウスと同じ伝統的材料で仕上げられています。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス3

■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-3


  上の写真は、セミ・ディタッチド・ハウスの裏側、バック・ガーデン側から見たファサ

  ード写真です。窓先にかたまっている人達は同じ調査団のメンバーです。バック・

  ガーデンのファサードの中央戸境部分に木製塀が設けられているのが見えます。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス4

■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-4

  

  上の写真は、バック・ガーデン側を写したものです。バック・ガーデンの戸境に設

  けらている木製塀が、かなり近接して並んで設けられているのが見えます。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス6


■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-5

  

  上の写真は、バック・ガーデンの住宅とは反対側の端っこの木製塀を写したもの

  です。セミ・ディタッチド・ハウスのバック・ガーデンは幅が狭いが奥行きが深いこと

  この写真で判ります。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス5



 ■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-6 


このサイトを訪れた時、上の写真で示したセミ・ディタッチド・ハウスと同じセミ・ディ

  タッチド・ハウスで工事中のものがありました。この写真で、屋根が木造でできて 

  いることが判ります。1階外壁仕上げは煉瓦積みですが、2階外壁がコンクリー

  ト・ブロック積みでできていることが判ります。




エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス7

■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT-7


  上の写真は、先の工事中のセミ・ディタッチド・ハウスの内部写真です。外部は

  煉瓦造に見えますが、内部を見ると、コンクリート・ブロック造であることが判り

  ます。床は、木造であることが判ります。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-セミ・ディタッチド・ハウス・サイト


■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT SITE-1

  

  上の図は、典型的なセミ・ディタッチド・ハウスのサイトプランです。黒ずんで見え

  るのが、セミ・ディタッチド・ハウス、単線が各宅地の境界線です。ガーデン各宅地

  の形が短冊状であることが判ります。通りに面してあるフロントサイドには小さな

  フロント・ガーデンが、バック・サイドには奥行きの深いバック・ガーデンがあるの

  が見えます。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-ブレンサム・ガーデン・サバーブ・サイト

■ SEMI-DETACHED HOUSE HOUSING PROJECT SITE-2


  上の図は、ロンドンの郊外住宅地ブレンサム・ガーデン・サバーブのサイト・プラン

  です。通りと短冊状の各宅地があるのが見えます。最も多いのが3戸以上の住

  が連結して建てられるテラスド・ハウスで、その次に多いのが2住戸で1棟のセミ・

  ディタッチド・ハウスです。ディタッチド・ハウスはありますが稀にしかありません。