コンビニから出て
歩き出すと
落ち葉の群れが
地面で渦巻いていた。
なんだ?
確かに風が強い。
明るい陽の光は
こぼれているが
濃くなった鼠色の雲が見えた。
少しマスクをずらしてみる。
雨の匂いだ‥
数秒も迷うことなく
コンビニへ戻った。
ビニール傘を手に
外に出ると
あっという間に豪雨になった。
傘は手に入れたものの
役割を果たさないような
容赦ない雨足に
笑いが込み上げるくらいだ。
清々しいという言葉を
正に体感したという感じだ。
しばらく透明な傘越しに
雨の景色を楽しんでいたら
空にかかる虹に気づいた。
服も靴の中も
びしょ濡れになっていたが
妙にいい気分だ。
虹がよく見える
横断歩道の手前で
足を止めた。
信号はじきに青に変わったが
少しだけそこにいたかった。
目の前が霞むような
強い雨に打たれていた。
周りの音も消えてしまいそうだった。
世界に1人だけいるような
不思議な気持ちにもなった。
そして、その空間が
とても好きだと思った。
二重にかかった虹。
あっという間に消えた。
今日の見た景色も
感じたことも
この写真なんかも
増えていく記憶のどこかに
あっという間に
埋もれてしまうだろう。
たぶん人生を振り返った時に
思い出さないような
些細な一コマなんだろう。
それでもあの空間は確かにあった。
こうして文章を残している
この瞬間も確かにある。
言葉にすることで
少しでも痕跡を
留めておきたいのかもしれない。
いつか忘れても
この世界がなくなったとしても
今日の雨も虹も
その後の洗い流されたような
雨上がりの空も
どれも美しかった。
紛れもない事実を
ここに記しておくことにする。