『やっぱり・・・。』





ケータイから聞こえるギグァンの怒ったような、
でもどこか冷めたような声・・・・・。




『いやっ、これはね・・・。』


『おお!!わるいっ、電話してたのかっ・・。』


『先輩、すみません・・・。』




そう言って私はホテルの廊下にあるソファに座る。
ケータイからは何も聞こえてこない・・・。




“怒ってるよね・・・?
電話しなかった事・・・。男の人と一緒に居る事・・・。ウソついた事・・・・・。”





『ギグァン・・ごめんね・・・。』


『何で謝るのっ?何かやましい事があるから謝るんでしょ??』



私の声に被せるように怒ったギグァンの声が聞こえてきた。



『ちがっ・・。違うよ・・・。やましい事なんて何もない・・・。』


いつもの私とは違う蚊の鳴くような声。



『じゃあ何でウソつく?・・・それにヌナにその気がなくても
相手はヌナの事好きかもしれないだろっ!!』




【相手はヌナの事好きかもしれないだろっ!!】



今思いっきり年下の彼氏に怒られてるのに、
可愛い嫉妬をしてくれてる事に頬が緩みそうになってしまった・・・。




いけない。いけない・・・・・。




『ヌナっ!!聞いてるのっ??』


『ごめんっ。聞いてるよ・・・。ごめんなさい。
でも、久しぶりに会った先輩でね、二人でゆっくり飲もうって言われたから・・・。』



ヌナ・・・。



呆れたようなギグァンの声。


『男の人が二人で飲もうって言うって事は、多少なりとも下心があるってことだよ?』



分かる?って今度は諭すような声・・・・・。



『いや・・・先輩はそんな事・・・』


『あああぁぁぁ!!もうっ!!ヌナはなんにも分かってない!!』




ヌナは綺麗なんだからっ!!




“えっ?今私の事綺麗って・・・?”




今私、完全にニヤケ顔になってる・・・。



『ヌナっ!今どこにいるのっ??』


『えっ??えーっと○○ホテル・・・。』


『ほっ・・ホテル・・・?』


『あっ・・。違うよっ!!ホテルのラウンジ・・・。』


『あっ・・当たり前だろっ!!今すぐ迎えに行くからそこで待ってろっ!!』







ホテルだって・・?何やってんだよ、ヌナは・・・。
ヌナにその気なくても相手は男だぞ?
力づくでも部屋に連れ込めるだろう??


世間を知らな過ぎだ・・・。
会ったらお仕置きだな・・・・・!!





宿舎のリビングで電話していたオレは、
周りにメンバーがいる事もすっかり忘れていた・・・。



『どうした?お前が怒るなんて珍しいな。』


『どうせ、ヌナとの痴話げんかでしょ?』


『リビングじゃなくて他の部屋でやってよね・・・。』


『下心が・・とか、綺麗だ・・とか、まったく・・聞いてらんないよ・・・。』


『ああぁぁ。オレもあのコに会いたくなったから電話しようかな。』



メンバーが口々に何か言ってたけど全て無視して
財布とケータイだけポケットに突っ込んで
『今日は帰らないかも。』って一言告げて宿舎を出た。








電話を切ってラウンジに戻る・・・。


『先輩、さっきはすみません。』


『いや、こっちこそ・・。・・・・・彼氏?』


『えっ?えぇ、まぁ。』


『そっ・・か・・・。どんな奴?』


まさか自分が担当しているアイドルです!!とは言えるはずもなく・・・。


『そうですね・・・。カッコ良くて、可愛くて、私の事スゴク大事にしてくれる・・・。
私にはもったいないくらいの人です!』


『それは凄いな・・・。もし大したことない奴だったら奪ってやろうと思ったのに。』



無理そうだな・・・。



『先輩??』


『いや、何でもない。そんな素敵な彼氏がいるなら
こんなところに男と二人で来たらダメだぞ?それにオレだって勘違いするだろ?』



えっ??



『そんな上目遣いに可愛い顔したら・・・オレじゃなかったら襲われてるぞっ。』




こりゃ、彼氏も大変だ・・・。



そう言っておでこをペシッと叩かれた・・・。




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