雪山のご老人のお話

 

こんにちは気づき
新宿バランガン鑑定士の実知佑奈(みち ゆうな)です。

 

 

 

前回のブログの続きとなります。

『彩乃の巣〜実知佑奈〜』のYoutube動画 をまだご覧になっていらっしゃらない方は、動画内に少し出てくる「雪山のご老人」とのストーリーとなりますので、ぜひご覧くださいませお願いそして前回のブログも読んでくださいね!

 

 

花火『彩乃の巣』に出演いたしました花火

 

 

 

 心の器の水

 

雪深い山道で、一台だけ車がやってきました。
これを逃したら、凍えて本当に終わると思い、
腕を振ってオーバーリアクションで気を引きました。


その時私は真っ赤なロングコートを着ていたので、幸いにも真っ白な雪景色の中でアイキャッチに大いに役立っていたことでしょう。

 

 

 

車種はあまり詳しくないのでよく分からなかったのですが、軽自動車になるのかな?


停まってくれたその車は一般的な暮らしの方が乗るような車で、特別高級車ではありませんでした。

 

 


乗っていたのは、60代くらいの男性が運転手で、もう一人は70代後半から80代くらいの男性でした。服装は地味ではありましたが少し小綺麗な格好をしていました。

 

 

 

 

「さっき駅の方向から歩いていたよね、大丈夫?
このあたりの人じゃないんでしょ?」

 

 

 

 

「はい、◯◯駅まで行くつもりだったんですけど、

雪の影響で、この先電車で行けなくなっちゃって・・・」




「それは大変だ、送ってあげるから乗って行きなさい。」

 

 

 

 

「ありがとうございます!助かります」

 

 

 

寮のある駅まで大体車で40分と50分くらいだったでしょうか?もっとだったかもしれません。


最寄駅からも歩いて30分くらいあったようです。

 

 

 

 

「どうして他から来たってわかったんですか?」


「だってそんな派手な格好している人、この辺り歩いてるわけないし、明らか雪に慣れてない人の格好だから。だいたいみんなすぐ車だからそんな荷物持って歩いてないよ」


本当はもっと方言みたいなその地元の喋り方だったので、すごく距離感が近いあたたかみがある口調でした。活字にした途端、淡々としたイメージになってしまうので、私の拙文も加わって伝えるのが難しいところなのですが。

 

 

 

男性二人の関係性は親戚とか家族とかそんな関係じゃないことは直感ですぐに分かりました。

 

 

 

70代の男性は私に心配と興味を向けて質問し、60代の男性は運転しながら私たちの会話のやり取りを静かに見守っていました。

 

 

 

「なんであんなところに居たの?」

 

 

「実は私これから寮に入って住み込みで働くんです」

 

 

「・・・どこから来たの?」



「大阪です」

 

 

「なんで大阪からわざわざこんな田舎に?」

 

 

 

 

「実はマンションが火事になっちゃって、もう色々手放して、誰も知り合いのいない土地に行って、住み込みのレストランで働くことにしたんです。」

 

 

「そうか・・。君が今から行こうとしているレストランも数年前に全焼してね。働いていた人々も希望をなくしてもう再建は厳しいかもという感じだったんだけど、地元の人たちの金銭的な応援もあって最近再オープンしたばかりなんだよ・・・。不思議な縁だね。他に頼れる人は?家族は?」


「頼れる家族はいないです。唯一家族のように思っていて長くお付き合いしていた彼がいたのですが、最近突然のお別れがあって・・・」

 

 

「‥。そうだったんだね。慣れない土地で一人では心細くないかい?」



「全くないと言ったら嘘になりますけど、私の心の器にもうそんなに何かを感じる気持ちが残っていないというか・・・。嬉しいも怖いも辛いも悲しいも感じなくなったというか・・・」

 

 

 

 

その言葉を言うと、ご老人の顔が一気に寂しい表情になり、

 

 

「わしの養子になるか?」

 

 

 

 

・・・え

 

 

 

 

 

 

びっくりして何も言えずにいると、ご老人はゆっくり自分の話を聞かせてくれました。

 

 

 

「わしには息子がいてね。でも親子らしい関係は全くなくて、息子夫婦とは疎遠でね。」

 

 

 

「孫も居なくて、妻には先立たれて・・・、わしも年齢的にそんなにこの先人生が長いわけじゃない。こんな身なりをしていて信じられないかもしれないが、資産が有り余っていて使いようがない。

息子にとはあまり思っていない。揉めるとは思うけれどいい使い方にはならないとわかっているから。ちゃんと誰かの役に立つと準備して安心して逝きたい」

 

 

その瞬間、ご老人の孤独感と共に色んな気持ちが私の中に流れ込んできました。自分のことはもう感じるだけの水(感情)が器に残っていなかったのに、ご老人の言葉に私の心の器はどんどん水が足されていく感覚がありました。

 

 

 

「早まらないでください」

 

 

 

ずっと静かに私たちの会話を聞いていた運転手のご老人が、悲痛な叫びのような、でも最大限に気持ちを押し殺して低い声で言いました。

 

 

 

 

出会ってまだ道中30分の経っていない状況で、よく分からない小娘の私を信用してくれて。

 

 

身内よりも他人の方が話せたり、気持ちを楽にしてくれたり、気遣える愛情を与えたくなったり、そう思える気持ち、私と同じなんだなと思いました。

 

私は火事もあって人生で一番お金がない時。ご老人はお金が有り余っている。
だけど同じ孤独感や家族の悩みを抱えている。お金があるだけ幸せなのかと思ったらそうでもない。

 

 

 

そして近い人と疎遠で孤独だからこそ繋がりを求めたい。

同じような人を助けたい。

 

 

 

 

 

そんな気持ちはもしかしたらこのご老人との出会いで気づき、もしかしたら占い師になる原点がすでに生まれていたのかもしれない。

 

 

 

レストランに辿り着き、私は寮の前で一礼し、

 

 

 

「ありがとうございました。家族にならないかと、繋がりを作ってくれようとしてくださってありがとうございました。よかったらお互い何かあったら連絡し合いましょう。」

 

 

「何かあったら君から連絡しておいで。わしはそのうち君の顔を見にレストランに食べに行くからね」

 

 

と言ってくれ、連絡先を受け取って別れました。



 

その後レストランでお顔を見ることはありませんでした。

地元のスタッフにこの話をしたら、やはりこの辺りでは有名なお金持ちの方だったようです。

 

 

 

 

それからは働くのと休みの日の食料調達で必死でした。

 

 

 

 

寮生活やレストランでのお仕事が慣れてきた頃、連絡しようと思っていましたが、


その後も私の波瀾万丈が止まらず、少ししてその土地を離れました。

 

 

 

 

 

今でも家族として迎え入れてくれようとしたご老人を思い出すことがあります。

 

 

幸せでいてくれていることを願っています。





今日もご覧いただきありがとうございますオッドアイ猫