もうこの人とはつき合わなくていいな、と思う、決定的な瞬間がわたしにはある。

一緒にマスクブランドを立ち上げたパートナーに「わたしの方が大変だから、利益折半は不当だ」と言われたときもそうだった。

 

 

 

「なるほど!ザ・ワールド」の愛川欽也に「はい、消えた!」と机をたたかれたときみたいに、一瞬でわたしの中から消えた。(古いたとえで申し訳ない)

 

それまで細かいモヤモヤはずっとあったけど、つき合いをやめたいと思うほどではなかった。
引き金となる、決定的な言葉ってあるもんだなと。

 

つい最近も、似たような思いをした。
近いうちに一緒に行こうねと以前から話していた、とある場所に、行って来たと報告されたときだ。

 

そのとある場所とは、ちょっと遠くて、ちょっと敷居が高くて、ちょっと値段も高くて、ひとりで行くような感じの場所ではなかった。
共通の知人が関わっている場所だったので、自然と一緒に行こうという話になっていた。
彼女が誰と行ったかは知らない。

なんで誘ってくれなかったんだろう、という気持ちと、なんでいけしゃあしゃあと報告できるんだろう、という気持ちがないまぜになった。

 

わたしと行きたくないのなら、それはそれで仕方ないと思う。
行きたくないと思わせる理由が、わたしにはあったのだろう。
そう反省するくらいの謙虚さは、わたしにだってある。

それよりも、聞いてもいないのにそれを伝えてくる無神経さに、わたしの中の愛川欽也が声高らかにジャッジを下した。

 

おそらく彼女は、いじわるな気持ちで報告したのではないと思う。
一緒に行こうね、などというわたしとの約束なんか全然気にしていなかった、というほうが正しいだろう。

 

いずれにせよ、あの瞬間、わたしは彼女との間に一枚の重いシャッターをおろしたのである。
勢いよく。しかし音を立てずに。

 

 

 

いいわ、別に。
わたしには、分かってくれる家族がいるし。
家族ってほんとにありがたい。
結婚してよかったわぁ。

いや、ちょっと待てよ。
分かってくれる存在が、もしいなかったとしたら?

 

家族じゃなくても、友達でも恋人でも、だれか自分を分かってくれる存在がほかにいればいい。
でも、いなかったら?

 

シャッターはおろせなかったんじゃないか。
おろす勇気を持てなかったんじゃないか。

カチンと来たその気持ちに蓋をして、つくり笑いをしてずっと彼女とつきあっていったんじゃないか。
ひとりになるのが怖いから。

 

結局、人はひとりじゃ生きられないんだな、とめぐりめぐってそんなことを考えた。
そして、家族も大事だけど、もっと友達が欲しいな、と思った。

 

 

 

わたしの母が、よくこんなことを言っていた。
「大人になってから、本当の友達をつくるのは難しい」

 

わたしもずっとその通りだなと思って生きてきた。
確かに難しい。

ママ友もそれなりにいるけど、わたしは別にランチに行くための友達が欲しいわけじゃない。
子供の相談とか、学校の不満とか、先生のうわさ話とか、夫の愚痴とか、そういう話も大事かもしれないけど、わたしが求めているのはそういうんじゃない。

 

大人になってから欲しい友達は「仲間」かな、と最近思う。
同じ目的や未来に向かって、切磋琢磨できる、尊敬し合える仲間。

 

わたしにも、親友と呼べる数十年来の古い友人は何人かいる。
何年会っていなくても、やっぱり大事な大事な友達だ。
会えば、とめどなく話せるし聞ける、心を開いて話し合える。

 

 

 

だけど、過去と現在のことは話せるけど、未来のことはどうだろうな。
公務員の友達と、雇われない生き方を選んでもがいている私とで、見ている未来は同じだろうか。

 

じゃあ、仲間ってどうやったら見つかるんだろう。
そう思って、いろんなコミュニティの門戸をたたいてみたけど、めっちゃ相性合う!と思う人はそんなにはいない。

 

もう、自分でコミュニティ立ち上げるしかないんじゃないか。
出来たら最高だけど、果たしてそんなことができるのか。

 

 


話は変わるけど、わたしは独身のころ、女友達より男友達の方が圧倒的に多かった。

男友達はいい、視点が違うから話していておもしろい。
キラキラもしてないし。
キラキラしてない女子のひがみかもしれないけど。

そしてゲイ友はもっとおもしろい。
男友達より一歩も二歩もつっこんでくるから、腹を割りやすい。
あと、お互いめんどうなことにならないと分かっているから、距離がぐっと近くなる。

 

ゲイ友の難点は、恋愛話が長いこと。
ふだんゲイを隠して生きているから、話せると分かると延々しゃべってくる。

 

結婚して初めて気づいた。
夫がいる身で男友達を作ったり遊んだりするって、かなり難易度高いってことに。
男友達とサシで飲んでるのが誰かの目に入ったら、なに言われるか分からないし。
夫もいい気持ちしないだろうしね。

 

でもゲイ友だったらいいんじゃない?
わたしにゲイの友達がいっぱいいたことを夫も知っているから、ゲイ友と遊んでくるって言ったら文句言わないかも。

 

ってことで、札幌でゲイ友募集中です。
未来を語り合える仲間が欲しいな。
恋愛話は、1時間までなら聞きます。
なんなら、本州のゲイ紹介します。
若い子はいないけど。

 

今回の「はい、消えた!」は、粗末に扱われたことがきっかけだったと思う。
わたしも誰かにそんなことをしていないか、顧みるよい機会にもなった。
好きじゃない人、苦手な人がいるのは仕方ない。
でも、無神経な扱いだけはせずに、品良く去ろうと心に誓った。